【書評】日本で「ありえない」けど世界では「あたりまえ」のコト

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「日本の常識は世界の非常識」という言葉があります。文字通り、日本では当たり前だと思っていても、世界で見たら「信じられない」「非常識」になるというものです。これは逆も然りで、世界で見ると当然でも、日本にいる私たちにとっては「ありえない」ということになるのです。それを集めた一冊の本を紹介しているのが、無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の著者で編集長の柴田忠男さん。驚愕してしまうような世界の「あたりまえ」をレビューしています。

偏屈BOOK案内:斗鬼正一『開幕! 世界あたりまえ会議』

71BqRVeppUL開幕! 世界あたりまえ会議
斗鬼正一 著/ワニブックス

図書館の新刊棚にあったコンビニ本テイストの雑学本。筆者は江戸川大学社会学部現代社会学科文化人類学・民俗学コース教授。誰かにとっては「あたりまえ」だが、私たちにとっては「ありえない」ことを、おもしろおかしく紹介する本で、文化人類学の研究書ではない。フリーのライターが、30冊超の参考文献を漁って作ったものと推察できる。各議題のタイトルは簡潔でよろしい。

男と女について、人生について、コミュニケーション、身のまわり、生きるため、といった5つの「あたりまえ会議」。議題83件を見開き2ページで説明する構成で、簡潔で丁寧な本文の漢字は全ルビ付き。大事な記述は太字と波線罫付き。ヘタヘタな挿絵がいい味。各議題の文末に「日本人からしたら……」というツッコミのようなコメントが入る。小学生でも読めて、そこそこ面白い。

「花嫁が次々と新しい彼氏を引き連れてくる」「幼すぎる妻を手塩にかけて育てる」といった話は、太平洋の島々や未開発地域の話だから斜め読み、主に文明国のおかしな議題が読ませる。議題1は「男女を徹底的に分ける」で、イランではバスは男女が前後に分かれ、出入り口も別。列車も男性と家族連れ専用車両、女性専用車両に分かれているなど、みっちり男女分離が行われている。

「そんな国ですから、たとえ外国人でも、夫婦でない男女がホテルで同室に泊まることは、非常識どころか犯罪で、逮捕されてしまうのです」って、ほんまかいな。トップバッターの記事だから、間違いないはずだ。「ナンパで真っ先に尋ねるのは、苗字」とは、「同姓不婚」という伝統のあった韓国の話。自分も相手も同じ苗字だったら結婚できなかったが、いまは民法改正で緩和された。

それでも8親等内は結婚不可。日本では3親等以内の親子、兄弟姉妹、祖父母と孫、甥姪と叔父・叔母は、慣習的にも法律上も結婚できないが、いとことなら可能である。ところが、韓国人の目にはこれが非常識に見える。韓国では、婚活は焦るな危険。ブレーメンなどドイツ北部の都市では、独身のまま30歳を迎えてしまうと、街の中心にある大聖堂の掃除という罰が与えられるという。

この作業中に、男性は未婚女性から、女性は未婚男性からキスをもらわない限りやめられない。これには同窓会の意味合いもあり、罰せられているはずの本人もみんなでにぎやかにビールやワインを飲む。早く結婚して子供を持てという願いや圧力が込められた通過儀礼なのだ。ドイツはマザコン大国らしい。

結婚披露宴の費用は新婦持ち、というのがアメリカの常識。変なの。結婚は厳格な契約である、というのがイスラム国。変なの。重要なのは新郎側が新婦側に支払う資金(婚資)で、イスラムの法律に定められている通り、前払い分と後払い分に二分され、前払い分は結婚時に、後払い分は離婚した場合に支払うと取り決められている。妻にとっては離婚保険に加入したようなものだ。

その妻が先に死んだ場合、夫は妻の遺体に触れることはできない。結婚は契約なので、死んだら自動的に契約解消となり、もはや夫婦は他人になってしまうからだ。日本も「少しでも若く見られたい女性」「証明写真はなぜか正面顔」の2議題で登場する。日本人にとって「ありえない」ことが世界のどこかでは「あたりまえ」というのは興味深い。病院の待合室向きの本である。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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