中東や欧州など、世界各地に感染が広がる中国震源の新型肺炎。韓国でも感染者が一気に増大し、政府が感染病危機警報最上級の「深刻」を発令する異例の事態となっています。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴31年の日本人著者が、集団感染の原因となった新興宗教団体「新天地」の実態や緊迫感に溢れる韓国社会の現状を紹介しています。
非常事態、新型コロナ
新型コロナ事態が一時下火のような状況を見せたのだが、19日の大邱(テグ)の新天地教会の集団発生をうけていま韓国は大騒ぎとなっている。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は23日、政府の危機警報の段階を、現在の「警戒」段階から最高段階の「深刻」に格上げすると明らかにした。
大統領は同日、「COVID-19事態が重大な分水嶺を迎えた。今から数日間が重要なヤマ場」とし「政府と自治体、防疫当局と医療陣、さらに地域住民と全国民が渾然一体となって総力対応しなければならない重大な時点」との見方を示した。これは「COVID-19」が予想を越える速度と規模で拡散し、全国的に危機感が高まっている状況を考慮した決定。
韓国での感染病危機警報は、関心・注意・警戒・深刻の4段階に分けられている。海外での新型感染病の「発生や流行」をもって「関心」と表記される。同様に「国内流入」となった場合は「注意」、「制限的伝播」は「警戒」、そして「地域社会の全壊または全国的な拡散」が認められば「深刻」と区分される。
韓国政府が「深刻」段階を発令するのは、2009年に新型インフルエンザ事態発生以後、11年ぶりのこと。深刻段階が発令された場合、政府が休校令や集団行事の禁止を強制できるなど最高水準の対応が可能となる。
文大統領はこの日の発言で「大規模に起きている新天地集団感染事態の以前と以後では、全く異なる状況」とし「既存の疾病管理本部中心の防疫体系と中央捜査本部体制は一貫性を維持しながら、総理主宰の『中央災難安全対策本部』に格上げし、全省庁の対応と中央政府・自治体の支援体系をさらに強化し総力で対応する」と説明した。合わせて「規定にこだわらず前例のない強力な対応を積極的に推し進めるように」と強調した。「大邱だけでなく全国の自治体が新天地施設を臨時閉鎖し新天地の信徒を全数調査して管理に乗り出したのは共同体の安全を守るための当然で不可避な措置」と説明した。
文大統領は「宗教活動の自由を制約するためではなく、地域住民と国民の生命と安全のためであり、新天地信徒の安全を守ることでもある」とし「新天地教会と信徒たちの積極的な協力をお願いする」と語った。
ところでこの新天地とは何か。韓国でできた新興宗教の一つ。正式名称は「新天地イエス教証拠幕屋聖殿」という。韓国語の発音では「シンチョンジ イエスギョ ジュンゴ ジャンマク ソンジョン」となる。
1984年3月に李晩煕(イ・マンヒ)という人間が創設したキリスト教系新興宗教集団。ヨハネ黙示録を中心に新しいエルサレムの建設を主張する。李晩煕教祖は1931年、慶尚北道清道(チョンド)郡生まれで、現在88歳。独特なのは京畿道果川(クァチョン)市を聖地と考え、“約束の地”と規定しているという点だ。韓国のすべてのプロテスタント宗派ではこの教団を異端と規定しており、他の宗教を異端視せず多くを包容することで有名なカトリックでも警戒されている教団である。2007年末にMBCの「PD手帳」という番組で報じられてからイメージが失墜し始めた。
2020年2月19日に「COVID-19」の31番感染者が礼拝に出席した教会がこの新天地教会。これによって全国的に感染者が数十人ずつ続出することになった。教団と31番感染者の無責任な行動と対応で、全国的に憎悪に近いほどの多くの非難が沸き起こっている。
ただ、新天地に腹を立てているだけでは事態は収まらない。外出を控えるなり手を洗うなりマスクをするなり、自分でできることはなんでも実行していくしかない。
2月23日午後5時基準で、中国の確定者は7万7,042名、死亡2,445名。韓国の確定者は602名、死亡5名、退院18名となっている。
23日午後には、韓国の幼稚園、小中高すべて、学期はじまりを3月2日から3月9日へと1週間延期することが決まった。こんなことは筆者が韓国に来て以来、はじめての事態だ。イスラエルは、本日、韓国人の入国を禁止する措置を取ることにした。中国についで第二番目に危険な国となったのである。
今後新型コロナ騒動がどのような動きを見せるのか。日本もそうであるけれど、韓国も重大な岐路に立っている。北朝鮮の状況も気になるところだが、北については、また稿を改めてお届けしたい。
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