全てチグハグ。新型コロナ対策で露呈した首相「側近政治」の弊害

arata20200312
 

新型コロナウイルス対策を巡っては、その全てが後手に回り、場当たりの感すら漂う安倍首相の決断。隣国の台湾が次々と有効な対策を打ち出し感染拡大防止に大きな効果を上げていますが、なぜ我が国はこのような状況となっているのでしょうか。元全国紙社会部記者の新 恭さんが自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、その原因を探っています。

ちぐはぐな新型コロナ対策は側近政治の弊害か

時節柄、みんなうちそろって、家でゴロゴロしておれば、そのうち新型コロナウイルスとやらも退散してくれそうなものだが、人間、食っていくには、籠ってばかりもいられない。

防疫と経済をどう折り合いつけて、国を航路上に保っていくかは、船頭である安倍首相の舵さばきしだい。とはいえ、水際作戦の失敗といい、唐突な“学校閉鎖”といい、やることなすことがチグハグなところを見ると、この濃霧のなかをくぐりぬけて、東京オリンピックにたどりつくにはもはや、奇跡を祈るしかなさそうである。

時は令和2年2月28日の夜。東京は永田町のど真ん中、安倍首相の公邸に当世の流行作家、百田尚樹氏と、売り出し中の右派論客、有本香氏のご両人が招き入れられた。夕食をともにするためである。

気が合う二人との会食とはいえ、よりによって、国民に痛みを強いるイベントの中止や学校の臨時休校を、一国の首相が粛然と呼びかける前夜のこと。よほど深いワケがあるのではないかと、記者たちが色めき立つのも無理はない。

なにしろ、百田氏は安倍首相をして「有名になられる前から私は百田さんの作品の愛読者」といわしめた作家だ。その人が昨今、ツイッター上で安倍政権に手厳しい意見を吐いている。

「鳩山由紀夫・菅直人以上に無能な首相」。これは、安倍首相には骨身にこたえる言いぐさである。なにかといえば民主党政権を持ち出して、安倍政権の良さをアピールしたがるオコチャマ宰相なのだから。

そして同じ日に百田氏は「今後1ヵ月、中国と韓国からの入国を全面禁止」とツイートした。

そのころ、右派の政治家や論客の間で、習近平氏を国賓として日本に招くのはケシカラン、という空気がいちだんと広がり、安倍首相への風当たりが強くなっていた。安倍首相はネットで褒めそやしてくれる応援団の声を楽しみにし、心の支えにしているフシがある。とりわけ、百田氏や有本氏のような影響力がある著名人はお宝だ。

もちろんツイッターのうえではあっても、安倍首相につれない素振りをする百田氏には、それなりの計算がなかったとはいえまい。糸を引いたところに食らいついてきた一国の宰相の居城に乗り込んで、特別なもてなしを受けた百田氏らは満足度100%だったようだ。

<2月29日の百田氏ツイート>

言うべきことは言ったというのだから、「中国と韓国からの入国を全面禁止」という主張も当然、伝えたに違いない。

安倍首相が、なぜか市中感染が広がっている今ごろになって、中国と韓国からの入国者を2週間にわたり指定場所に足止めさせる水際対策を表明したのは、習近平国家首席の国賓来日の延期が発表された3月5日のことだった。

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