全てチグハグ。新型コロナ対策で露呈した首相「側近政治」の弊害

 

その3日前のツイッターに、百田氏はこう投稿した。

まさか、百田氏の言うことをそのまま実行したわけではないだろうが、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の意見も聞いていないらしく、ほぼ安倍首相の独断専行だったのは確かなようである。

支離滅裂ながら思いつくかぎりの手を打ち、実行力あるリーダー像を自己演出したつもりでも、巷の意見は「遅すぎる」のオンパレードだ。

もはや水際作戦の段階は終わったと、百田氏ならずとも思うだろう。だが内閣支持率の急落で、安倍首相は失地回復に焦っている。それが、このところの政策判断にあらわれているのかもしれない。とくに“学校閉鎖”のもたらす市民生活への影響は甚大だ。

事実、“学校閉鎖”に科学的根拠がないことは、3月10日の参院予算委公聴会で、公述人の尾身茂・地域医療機能推進機構理事長、上昌弘・医療ガバナンス研究所理事長がそろって認めている。専門家会議のメンバーでもある尾身氏は「安倍首相のなんとかしたい気持ちは理解できる」と、配慮をにじませた。

専門家の意見を聞こうとしない側近政治は、肝心なところでボロを出す。そういえば、なんと安倍首相がイベントの開催自粛を要請したその日に、地元仙台市内で政治資金パーティーを開いた総理補佐官がいた。

その補佐官、名前は秋葉賢也というが、本人はこう開き直る。「危機管理をしていく立場にいますのでね、延期も検討したが、東北は6県とも感染者が出ていない。感染者がいる東京と違うんですよ」。日本列島にウイルスの“関所”があるわけでもあるまいに、よくぞ、たわけたことが言えるもんだ。

こういう人物がこの国の「危機管理」を、総理側近として担っているというのだから、たまったもんじゃない。

人物鑑識眼の乏しさか、お友達優遇か、つまるところ自業自得とはいえ、安倍首相はなんとも能天気な側近に囲まれて、頭の整理がつかないことだろう。

海外出張するたびに女性官僚を高級ホテルのコネクティングルームにはべらせていた和泉洋人総理補佐官なども、国会やメディアの追及から逃げまくるのに躍起で、とても的確な判断ができる状態ではなさそうだ。

なにはともあれ、専門家会議が新型コロナ流行の長期化見通しを表明した以上、延々と「自粛、自粛」で経済を犠牲にするわけにもいかない。どこかの時点で安倍官邸も頭の切り替えをする必要が出てこよう。そうなると、いま安倍首相が全力で取り組むべきは、医療体制の確立だ。

いま、この感染症の受け入れが可能なベッド数は全国で5,000ていどだといわれるが、これでは甚だ心もとない。人工呼吸器の数が足りるかどうかも不安があり、厚労省は2月5日付で、感染症指定医療機関と結核指定医療機関を対象に人工呼吸器の保有数などを調査するよう各都道府県に指示している。

感染爆発状態で死亡者数が半端じゃないイタリアでは、引退した医師の現場復帰を呼びかけて、医療従事者不足を補おうとしているらしい。重い患者に必要な人工呼吸器が足りず、もはや医療崩壊に近いのではと推測されるが、むろんそれはヨソゴトにあらず。

よほど病院側が用心してかからないと、潜在感染者から医師や看護婦がウイルスを移され、院内感染が広がって、一定期間、その病院の診療がストップする。そんな病院が増えていけば、ことは新型コロナだけの問題ではなく、国の医療そのものの崩壊につながりかねない。

print
いま読まれてます

  • 全てチグハグ。新型コロナ対策で露呈した首相「側近政治」の弊害
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け