新型コロナ対策のジレンマ。30万人以上の死者か、大量の失業者か

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先日掲載の「『新型コロナの感染拡大を遅らせても感染者総数は同じ』の大ウソ」で、独自に立てたモデルの計算から導き出された「感染拡大速度と感染者数の関連性」を提示し、大反響を呼んだメルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的エンジニアの中島聡さん。中島さんは今回、同モデルで試算した「イベント自粛や休校をやめるべきタイミング」を記すとともに、各国が避けて通れない「新型コロナ対策のジレンマ」についても論じています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2020年3月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

● 【大反響記事】「『新型コロナの感染拡大を遅らせても感染者総数は同じ』の大ウソ

感染モデルの詳しい解説

3月1日に100人の感染者が国内にいたとなると、ピークの時期は、

  • 感染率1.8:4月18日
  • 感染率1.3:5月8日

となります。色々な仮定が入っているので、必ずしもこうなるとは限りませんが、おおよその目安として参考にするのは悪くないと思います。つまり、今の感染拡大のスピード(1日33%)のままでは、4月の中頃にピークが来るけれど、何らかの対策で感染拡大のスピードを落とすことが出来れば、ピークは5月にずれ込む、ぐらいのイメージです。

「感染率を下げるために特別なことを永遠に続けないといけないのか?」という質問が来たので、それも考慮に入れたグラフを作ってみました。

下のグラフは、感染が縮小に向かい始めたところで、(規制を緩めるなどして)感染率を1.8に戻した場合にどうなるかを示しています。

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収束に向かっていた感染者数が再び増え始めますが、医療崩壊を起こすほどのことはなく、二つ目のピークを迎え、収束に向かいます。

この場合、ピークを低く抑えることは出来ますが、感染者数は6,200万人に増えてしまいます(感染率を1.3に押さえたままだと4,500万人)。

ちなみに、感染率を下げるために学級閉鎖・渡航禁止・イベント禁止などの措置をすると経済的なインパクトが大きく、あまり長期間行うことも好ましくないので、「どの時点で、どのくらいの期間」やるべきかがとても難しいのです。

このモデルに基づいて色々と試しましたが、ある程度感染者が増えた段階(40万人程度)で規制をスタートし、国民の35%程度(3,500万人)が免疫力を持った時点で規制を緩めるのが良いという結論になりました。

「ある程度感染者が増えた段階(40万人程度)で規制をスタートし」という部分が不思議に思えるかもしれませんが、感染者があまりに少ない段階で規制を初めてしまうと、規制期間が長期間に渡ることになるため、ある程度感染者が(つまり免疫を獲得した人が)増えてから規制をスタートした方が、規制期間が短くて済むのです。上で計算した拡散のスピードを代入すると、約30日となります。

ドイツのメルケル首相が、ドイツ国民の6~7割が新型コロナウィルスに感染することになると発言して注目を集めていますが(参照:「Merkel Gives Germans a Hard Truth About the Coronavirus」)、私も彼女のような立場にいれば、同様の発言をすると思います。

米国でも専門家は同じようなことを言っていますが(参照:「Republicans Were Warned in Private Briefing Most Americans Will Be Exposed to COVID-19」)、トランプ大統領からはそんな発言は出てきません。

有効なワクチンや治療薬が見つからない限り、このウィルスの拡散を止めることは出来ないのです。拡散のスピードをよほど上手に出来たとしても国民の45%、最悪の場合80%がこのウィルスに感染することになるのです。

そうなると、我々が出来ることは、(適切なタイミングで)拡散のスピードを抑えて医療崩壊を避け、重症者に適切な治療を施して、致死率を可能な限り下げることに尽きるのです。

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