また桑原氏は張本氏が指摘した「走り込み必要論」についても、こんな問題提起をした。
「走り込むことで心肺機能の向上や、遅筋と呼ばれる筋肉は鍛えられますが、過度な走り込みにはマイナス面もあります。活性化酸素がたまり、抗酸化作用が落ち、疲労が蓄積してパフォーマンス、集中力が下がるという現象が生まれるのです。
また速筋の肥大化にも逆効果が出ます。それらを防ぐためには、活性化酸素を取り除くため抗酸化力を上げるアプローチが必要になってきます。休息と栄養。つまり補助する意味でサプリメントの摂取もいるでしょう。
ウエートトレの倍を走るのではなく、走りこむことや、長時間の野球練習の負荷を与えると同時に抗酸化力を落とさないことが必要で、体内のグリコーゲンをどうカバーしていくか、など、現代のトレーニングの概念は、それらを含めて多岐にわたり広がっているのです」
故・金田正一氏は、ロッテ監督時代に、「走れ」「バケツ一杯の野菜を食え」と推奨していたそうだが、抗酸化力を高める食材の代表が緑黄色野菜だそうで、あながち、古い人の経験則も間違いではないよう。桑原氏も「実績を残した方々の意見は否定できない」という。 ただ、現在のトレーニングでは、それらの根拠が理論で説明され、選手に目的を意識づけさせるようになっている。 これまで100人以上のアスリートをサポートし、年間300回以上のワークアウトを実践しているフィジカルの専門家の桑原氏は「大谷のマッチョ化は間違っていないのか?」に対する答えをこうまとめた。
「結局は、野球で、いかに結果を出すかがすべてなんです。イチロー選手のように筋肉の柔軟性、可動域、疲労回復に重点を置く考え方もあると思います。
同じ陸上選手でもマラソンランナーと100メートルのスプリンターで必要とされる筋肉とその付き方が違うように野球競技でも、ポジションやプレースタイルによって個人差はあるでしょう。
ただ出力が大きくなると靭帯などの腱、関節への負担は増します。そこへのケアが追いついているのかという点での不安、懸念はあります。瞬間的なパフォーマンスはアップしますが、選手寿命を考えると、慎重に考える必要はあります。
元々、腱というのは強い部位ですが、そこ自体は鍛えることができません。それらのケアも含めてトータルでワークアウトを考えていく必要はあるのですが、私は、ウエートトレがマイナスになるという、古い球界の考え方は、そろそろ変えていくべきだと考えています。
大谷選手の肉体の写真1枚がいろんな人の目を奪う状態になっていることは、僕からすれば今シーズンの活躍が楽しみという印象でしかないのです。
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