日本式「クラスター潰し」の新型コロナ対策は本当に正しいのか?

reizei20200324
 

医療関係者らの懸命な「クラスター対策」の甲斐あって、新型コロナウイルスによる感染が最小限に抑えられていると言われる日本。とはいえオーバーシュートの可能性も否定できないなど、予断が許されない状況でもあります。現在の日本の新型コロナ対策は、果たして「正解」なのでしょうか。米国在住の作家・冷泉彰彦さんは今回、自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で日本式の「功罪」を考察するとともに、「都市封鎖」を選択したアメリカの現状を記しています。

改めて「日本式」の功罪を考える

新型コロナ対策について、明らかに日本の方式はユニークであるように見えます。

具体的には、

「成人の活動制限はせず、子供の休校だけを行う」
「徹底的に検査数の抑制を行う」

という2つの対策は、中国、韓国、欧州、アメリカのどこにも見られないものです。これには理由があるわけで、その分析については以下のような説明ができるとしてきました。

  • 高齢者の外出禁止より休校の方が人口が少ないので容易
  • 若年層は重症化事例少ないという事実は言わない方が効果大と判断
  • 3月一ヶ月の休校は事実上小学生630万人だけが対象、その割に社会への警告効果は大きい(但し解除の場合は逆効果が懸念されますが)
  • 検査数抑制は、検査精度の問題からくる誤解を防止し、検査場所での感染を防止するため
  • また何よりも、陽性イコール入院という運用の中での医療崩壊を防止するため

ですが、この説明だけでは不十分でした。一連の報道や政府発表を総合しますと、日本の戦略というのは、

「クラスターの発見、追跡、収束を徹底的に行う」

ことで、全体的な終息を狙うという、緻密な考え方がベースになっているようです。検査数の抑制というのは、医療崩壊防止ということもありますが、とにかくPCR検査というのも「クラスターの発見、特定、経過観察」の徹底的な調査を主目的として使うということにしており、そのために数的には抑制しているように見えるわけです。

一方で、19日の専門家会議で尾身茂博士の言っておられた「オーバーシュート」というのは、経路不明の感染が巨大な数となってクラスター追跡が破綻するという意味のようです。

実は、やみくもに「都市封鎖をやっても不十分」であり、とにかく「クラスターを追跡して潰す」ことをしないと全体の終息もありえないというのは、他でもないWHOのテドロス博士が、今日、現地の23日に言明しているわけですが、日本はその模範となるような戦略でこれまでもやってきたわけです。

問題は、この「クラスター潰し」という正攻法を最優先にして愚直にやっているにもかかわらず「オーバーシュートの危険」が否定できないということで、日本は日本で非常に厳しい状況にあるということです。

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