日本式「クラスター潰し」の新型コロナ対策は本当に正しいのか?

 

本日(現地23日・月)は私の住む州中部では冷たい雨が、そして州の北部では雪になっており、町はひっそりとしています。ただ、この23日からは、全国的に少し社会のニュアンスが変わってきたようにも思います。

1つは、経済の先行き不安が一気に増大しているということです。議会が景気刺激策パッケージ法案の可決に失敗しているということがまずあり、通常なら出てきているはずの雇用統計が先送りになっている中で一気に雇用が崩壊しているという疑心暗鬼がありということで、結局NYダウは582ドル安(マイナス3%)で引けました。

これと裏返しになりますが、多くの州で実施されている「外出禁止=都市閉鎖」をいつまで続けるのかという問題が真剣に議論されるようになって来ました。この点に関しては、NY州のクオモ知事は「今やっているのは経済のポーズ(一時停止)」であり、時期を見て再開しなくてはならないとした上で、その見極めは非常に難しいとしていました。

例えば、健康な者は出勤していいことにするのか、感染しても重症化の可能性が少ない年齢から出勤可能とするのか、といった問題を設定しても、答えは簡単ではないというのです。

今現在の社会の雰囲気からすると、この「外出禁止=都市封鎖」については、とても数週間ではダメで、数ヶ月、つまり5月から6月に解除できれば良いほうだ、という認識ができつつあるわけですが、その一方で、そこまで経済の空白を作ってしまうと、影響は大変なことになるという中で、とにかく週明けの今日はひたすら動揺しているという感じです。

そんな中、NYでもニュージャージーでも、「外出禁止の長期化」によるメンタルヘルスの問題が喫緊の課題になっています。とりあえず電話相談の窓口が設置されたりしています。

週末に近所を走っていたら、ある一軒の家にイタリアの国旗が掲げてありました。イタリア移民の家なのでしょう。意味としては2011年の「がんばろう東北」とか、2012年のハリケーン・サンディに際しての「ジャージー・ストロング」というのと一緒だと思うのですが、毎日のようにイタリアの苦闘に関してニュースが流れる中で、その国旗を見た私はエモーショナルな感じになるのを抑える事ができませんでした。

ところで、この23日には、そのイタリアの死者数に注目が集まりました。数がスローダウンしていれば、大きな山を超えたことになるし、そうなればアメリカや欧州各国にも希望になるからです。結果は、1日の死者が607で、累計6,077。数字としては厳しいですが、1日の数字の増加が大きく減ったという解説もあります。また、検査陽性は1日で4,789(累計6万3,927)で、過去5日間の中では最低だそうです。但し、これは週末のために検査処理数が減っている影響という解説もあり、油断はできないということです。

この検査処理数についてですが、NYは先週から大量検査体制に入っており、累計で2万人を越える陽性者を発見しています。では、その全てを入院させているのかというと、入院は13%に抑制して残りは自宅療養としているそうです(知事会見による)。にも関わらず、病院の現場では資材の不足が迫ってきており、そこから逆算して検査をやや抑制するという動きになってきているようです。

一方で、ニュージャージーの側では、検査拡大方針は継続しており、本日、23日(月)には大西洋岸のホルムデル町で新たにドライブスルー方式の検査が開始されています。ハッキリは分かりませんが、郊外型のコミュニティがほとんどであることから、検査で陽性を見つければ、クラスターが追えるという判断でやっているのではないかと思われます。

いずれにしても、今週は大きな山場となりそうです。今後の観点としては、

  1. 連邦議会で総額2トリオン(220兆円)という景気刺激策パッケージ(産業救済含む)が可決できるか?
  2. どこかの時点で失業数など雇用統計を出さねばならないが、市場や社会がその数字に耐えられるか?
  3. NY州などで医療現場の資材不足(防護服、マスク、手袋、人工呼吸器)の解消、更にはベッド数の確保ができるか?

という直近のテーマをクリアしながら、少しずつ「出口」を模索することになるわけで、大変な一週間になりそうです。

image by: 首相官邸

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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