法律的に自粛を強制することはできないにしても、そういう説明をする主催者に対して、実際に感染者が発生し、拡散していった場合の具体的な責任の取り方を問い詰めるべきではなかったでしょうか。答えられるわけがないのです。答えられなければ、開催を認めないと通告すべきですし、あのイベントに限定して速やかに緊急事態を宣言すべきだったのです。「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」は次のように明記しています。
「第三十二条政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第五項及び第三十四条第一項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする」
6500人の観客を入れて新型コロナウイルスを全国に拡散する一線を越えたということは、国民の生命に対して危険な行為に及んだということですし、人権を侵害したことになるのです。いかに法的強制力が備わっていないといっても、このイベント限定で緊急事態宣言を出せば、それを無視して開催強行とはいかないでしょう。これが、法制度を弾力的に運用するということではないでしょうか。
政府も埼玉県も、おそらくは開催自粛を強制すれば裁判になるし、損害賠償の問題も生じるかも知れないということで、責任を放棄したのだと思います。しかし、考えてもみてください。ビジネスに伴うリスクという点では、台風や地震でビジネスを継続できなくなるのと同じなのです。主催者の立場になれば、たまったものではありませんが、これが災害なら文句をいう相手もいません。自粛要請だから、なんとか開催に持っていこうと理由を述べるのです。
私は主催者を責めるよりも、機能しない法制度を政府が可及的速やかに改善することを希望したいと思います。(小川和久)
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