3月14日が全て。国民が新型コロナの警戒を緩めた安倍首相の言葉

 

このウイルスが厄介なのは、日本が感染爆発をずっと抑えることができても、それだけ終息が先に延びてゆく可能性があるということだ。3月27日の朝日新聞デジタル「論座」に掲載されたインタビュー記事において、桜山豊夫医師が詳しく語っている。

桜山氏は2009年の新型インフルエンザ発生時に東京都福祉保健局技監(医系トップ)として活動した経験がある。

「イタリアはいま山場を迎えている…日本について言えば、感染爆発が起こらなければ、小池知事が言っていた『重大局面』がずっと続いていくことになります。…外国から日本に入国してくる人たちはいます。永続的に外国への渡航を止めることはできません。要するに、日本は感染を抑えているがために、なかなか終息に至らないともいえます。とはいえ、感染爆発を抑えなければ、医療崩壊を招いてしまいます。とても難しい局面なのです」

桜山氏は「感染爆発への悲観論」と「みんなが予防行動を取ることで長い付き合いになるという悲観論」があると指摘する。

厳しい規制で感染拡大は一時的に抑えられるが、規制を緩めたとたん、再び感染拡大が始まるというのだ。いつまで経ってもその繰り返しになる恐れがある。その間に国の経済がボロボロになるのは必至だ。

桜山氏は「この疾患の場合、終息するのは、最終的に集団免疫を獲得していくしかないと思います」と言う。

数理疫学の推測によれば、国民の6割が感染し免疫を獲得することで、人から人への伝染がおこりにくくなるといわれる。それが集団免疫だが、日本人の6割が感染する、いや地球人類の6割が感染する日なんて、いったい、いつのことなんだと、途方に暮れてしまう。ほんとうに、東京でオリンピックができるのだろうか。

集団免疫をつけるといっても、そうそう政策的にコントロールできないことは英国の例をみれば明らかである。

ヤフーニュースに掲載されたイギリス在住の免疫学者、小野昌弘氏の記事によると、ボリス・ジョンソン首相は3月13日の演説で、「集団免疫」に頼る政策を打ち出した。以下は、小野氏の記事の一部だ。

最も異論を呼び起こしたのは、感染症状のあるひとの自主的な自宅隔離以外には社会隔離策がほとんど盛り込まれなかった一方で、英国民の多数がコロナウイルスに感染して英国民として「集団免疫」を獲得することで流行を終結する方針を明らかにしたことであった。

しかし、演説から3日後に発表された政府の科学アドバイザー、ネール・ファーガソン教授(インペリアル・カレッジ・ロンドン感染症疫学研究センター長)の報告書によって、3月23日に、ジョンソン首相は社会隔離策へと方針転換した。

生活必需品以外の店はすべて閉鎖し、市民は食料品・薬等の買い物・散歩、1日1度の運動のときだけ外出できる。一部の例外を除き自宅勤務とし、公共の場での二人以上の集会やイベントも禁止。これらを守らない場合は警察による罰金や介入…などだ。

ジョンソン首相に衝撃を与えた「ファーガソン報告」はこのようなものだった。

集中治療室ベッド数は少なく、今後の数週間で感染が爆発すると、大多数の患者を治療できない。集団免疫が成立するまで全く社会隔離策を取らなかった場合の感染者は40万人を超える。一方で、可能な限り社会隔離策をとって流行の拡大を遅らせたら、3~4万人まで減らしうる。

厳格な社会隔離策で完全に流行を封じ込めた場合、その隔離策を終了して国民を日常生活に戻すと、再び感染爆発することが予想される。

社会的に持続可能な社会隔離策として、集中治療室のキャパシティーを超えない程度の厳格さで社会隔離を行うという政策が考えうる。このためには、およそ2ヶ月封鎖を実行し、1ヶ月休むといったサイクルを長期にわたり繰り返すことが必要になる。

英国と日本では事情が異なるので、この報告をそのまま日本にあてはめることはできないが、日本の対策にも共通する考え方だと思う。規制と緩和を繰り返し、ベッドや人工呼吸器、医療スタッフの許容範囲内におさめることのできるよう、感染ピークの山をできるだけ低く抑えながら、時間をかけて集団免疫力を高め、収束につなげてゆくということだろう。

幸運にも特効薬やワクチンが早い時期に開発されれば、思ったほど長期化しないかもしれないが、楽観しすぎないほうがいい。

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