軍事アナリストが呆れる。自衛隊将官OBの「武漢ウイルス」発言

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新型コロナウイルスのパンデミックが、中国武漢での感染拡大を発端としていたことが影響してか、中国や中国人に対するヘイトスピーチの増加が問題となっています。メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんは、自衛隊の将官OBの中に「支那」や「武漢ウイルス」などの発言をする人がいることを指摘。好きか嫌いかで外交・安全保障戦略を推進するのは幼稚で危険だと警鐘を鳴らしています。

コロナの呼び方で評価は分かれる

コメディアンの志村けんさんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなり、その死を悼む声とともに「中国憎し」という声がネット上に飛び交うようになっているようです。

「新型コロナウイルスに感染し、3月29日に肺炎で亡くなったコメディアンの志村けんさん(70)。突然の訃報を受け、ネット上では『中国人に殺された』『許せない』などというヘイトスピーチも広がっている。政権批判に結びつけるものも拡散している(後略)」(3月30日付BuzzFeed Japan)

むろん、これは的外れな誹謗中傷でしかありません。しかし、私たちが考えなければならないのは、そうしたヘイトスピーチの根底にある日本国内の反中国感情です。新型コロナウイルスを「中国ウイルス」「武漢ウイルス」と呼ぶ人々は、中国側が嫌がる「シナ」「支那」の呼称を使う人々と重なっています。

これは、中国と外交的に渡り合い、中国の軍事的拡張と対抗していくといった日本の基本姿勢とは別次元の、感情的で幼稚とさえ言えるものです。

これまで私は、自衛隊の将官OBたちで反中国的な言辞を吐いている人々に、なぜ中国を挑発するようなことを口にするのか質問してきました。中国とは毅然と向き合えばよいだけの話なのに、どうして「支那」とか「武漢ウイルス」と言うのか。

論理的な説明をしてくれた人は皆無でした。「中国は嫌いだ」という感情の赴くままに発言しているのがわかりました。この人たちは、韓国、北朝鮮にも同じ姿勢をとっています。しかし、好きか嫌いかで外交・安全保障戦略を推進することなどできません。

もう少し階級的に上位の自衛隊の将官たちは、「若手の尉官が将官の階級章をつけているようだ」と苦笑いしていましたが、「支那」や「武漢ウイルス」を口にする人々は最高学府を出て、教養もあるエリートたちです。その発言は「階級章の権威」によってマスコミにも取り上げられますし、一人歩きしていく恐ろしさがあります。マスコミは「自衛隊の将官=権威者」だと思い込んでしまうのです。

中国の目には、これは御しやすい日本、簡単に勝てる日本として映っているでしょう。こんなことでは、日本は中国を向こうに回し、圧倒していくほどの国家安全保障戦略を備えていないことを白状しているようなものです。

新型コロナウイルスには、WHO(世界保健機関)によって「SARS-CoV-2(SARSコロナウイルス-2)」という名前がつけられています。WHOのテドロス事務局長が中国の影響の強いエチオピアの出身で、中国に忖度してきたという批判はあるものの、ウイルスの名称は客観性を持ったものです。

子供の喧嘩につながりかねない「武漢ウイルス」「中国ウイルス」を排し、少なくとも「新型コロナウイルス」と呼ぶなかで、日本という国家の水準の高さが明確になるのだと思います。新型コロナウイルスのパンデミックによって、日本は外交・安全保障についても試されていることを忘れてはならないでしょう。(小川和久)

image by:  B.Zhou / shutterstock

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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