剥がれた化けの皮。安倍首相「やってるフリ」で逃げ切り図る賭け

 

来年夏までの「1年延期」でよかったのか?

東京五輪組織委の森喜朗会長は、4月3日付朝日新聞のインタビューに答えて、3月24日に安倍首相がIOCのバッハ会長と電話会談して1年延期を決めた時の様子をこう語っている。

会議の30分前に来てくれ、と安倍さんに言われてね。彼は1年延期というから、『2年にしておいた方がいいのではないですか』と聞いたら、『ワクチンの開発はできる。日本の技術は落ちていない。大丈夫』と言う。

 

(来年9月の自民党総裁任期満了を踏まえて)『政治日程もあるよな』と言ったら、『あまり気にしないでくれ』と。安倍さんはかなり明快に『これでいいんだよ、1年でいいんだ』と言った。(安倍さんは)21年に賭けたんだ、と感じたよ……。

そう、安倍首相は1年延期に賭けたのだが、その賭けを支えるのは「ワクチンの開発はできる。大丈夫」という希望的観測でしかないということである。しかもこの短い台詞にもいくつか混濁があって、まずワクチンの開発と製造は来年夏前には無理だろう。ワクチンはどんなに早くても1年か1年半はかかるというのが常識である。治療薬はできている可能性はなくはないので、それが全世界に出回ってパンデミックは終息しているであろうことに賭けたということである。それに、ワクチンにせよ治療薬にせよ、たぶん「日本の技術」だけでは難しいだろう。

会員制情報誌『選択』4月号は、上述の「レムデシビル」はじめコロナ治療薬の開発競争の最前線をレポートしているが、そこでは「このように創薬技術を巡り、世界は激しい競争と合従連衡を繰り返しながら前進しているが、日本は蚊帳の外にいる。……現状、日本は欧米や中国の臨床試験の進展を祈るしかない」と余りにも情けない日本の現実を指摘している。この点でも安倍首相は、現実とは大きくかけ離れた、「嘘」のつもりではないのだろうが、はかない「夢」を語っているだけである。

漫画家のやくみつるが語っているのが正しい(4月4日付毎日夕刊「週刊テレビ評」)。

安倍晋三首相が東京五輪を「新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして実施したい」と、高校英語の「未来完了形」のような文体で語った言にまつまでもなく、東京五輪はコロナの世界的感染拡大の終息(ないしは開催可能と判断できるほどの「収束」)が大前提だ。であれば、1年後の開催を確認したというひとまずの結論は、中止の決定を1年間猶予してもらったことと限りなく同義ではないか。

 

開幕の3、4カ月前となる来年の今ごろ、改めて開催の可否を問われてダメとなれば「さらなる延期はありません。その時こそ待ッタなしに中止です」と〔IOCから〕言い渡されたに等しい。

 

そして現状を見るに、1年後、世界が平静を取り戻しているとはとても思えない……。

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