世界の政治も経済も構造転換に向かうのではないか?
結局、この危機の中で問われているのは、各国の指導者の質ということになるだろう。本誌No.1,037(「台湾との差が歴然。新型肺炎でも馬脚をあらわした後手の安倍政権」)では、米外交問題評議会シニアフェローのヤンゾン・ファン教授の「公衆衛生は信頼を基盤にしている。政府への信頼は社会資本であり、これが効果的な公衆衛生上の対策をとる上で極めて重要になる」(フォリン・アフェアズ・レポート3月号)という言葉を紹介したが、まさにその通りで、台湾を筆頭に、韓国、やや出遅れたものの途中からの中国などは的確な行動で国民の信頼を得つつ被害を一定のところで抑えてきた。反対に、国民をバカ扱いして言葉の遊びで操れば権力などどうにでもなるという調子で過ごしてきた指導者は、安倍首相も、トランプも、かなりの程度でジョンソンも、国民の信頼を得られないどころか失望ばかりを増幅させ、日々化けの皮を剥がされていく。
そのさらに先を眺めれば、このことを契機に、国家のあり方も世界経済の姿も、大きく構造転換を遂げていくことになるのではないか。米国は、世界最大の経済大国であり、全世界の軍事費の半分近くを一国で使い果たすほどの史上最強の軍事帝国であるけれども、その経済力と軍事力を振り回しても国民の命をろくに守ることができないという、情けない姿を晒している。しかもその責任を逃れようとするためだろう、これを「中国ウイルス」とか「武漢ウイルス」とか呼ぶことで危機の責任が米政府にはないことを国民に認めて貰おうとする、醜い努力を続けている。
ソウル大学の朴喆熙教授がこう述べる(4月5日付東京新聞「時代を読む」)。
コロナウイルスは軍事力や経済力に基づいている「強大国」のイメージを変えていく可能性がある。G7の一員である米国、英国、イタリアのような国がウイルスにこれほど弱いとは誰も思わなかった。
「ソフトパワー」の中身変わるのではないかと思う。ソフトパワーは文化、芸術、政治の質など主に国の魅力などを意味したが、国民に「命の安全と心の安心」を提供できる能力が含まれるだろう。「最低の生活保障、最高の医療保障、適正な福祉保障」など生活安全中心の国家競争力概念の重要性がますます重視されると思われる……。
米国は、偉そうなことを言っているけれども、最低の生活保障も、最高の医療保障も、適正な福祉保障もない、詰まらない国だと世界中の人々が思い始めることで、世界は変わるのかもしれない。ブータンの「国民総幸福度(GNH)」を本気で学び直そうか、という風に。
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