中国の不気味な動き。コロナ禍に浮上した金正恩「重体説」の裏側

 

着々と育つ新たな争いと災いの種

通常であれば、このような事態下では、米国の地政学上の支配下にがっちりと入っている世界第3位の経済国日本との協調で、経済的な覇権の維持と増大を迅速に図るのですが、その日本も今、COVID-19の感染拡大の最中で、収束の見通しが立たない状況であり、同時に日本経済を支える企業と雇用が大打撃を受ける中、支配国アメリカからの要請にフル回答することはできません。

よく例えに出される2008年のリーマンショックあたりまでは、まだ“日本株式会社”と言われたように、官民一体となって一致団結したアクションを講じることが出来たのですが、2020年の日本の現状は、One Teamやオールジャパンという標語ばかりが叫ばれる中で、全く一枚岩の対策を取れない状況です。

日本も、地政学上のリーダーになることが出来るポテンシャルがあったにもかかわらず、COVID-19の感染拡大とコントロールのまずい対応は、コロナ時代の地政学におけるリーダーシップグループからの脱落へと導かれることとなるでしょう。

ではロシアはどうでしょうか。国内ではCOVID-19の感染拡大が深刻化し、強権的なプーチン大統領の施策をもってしても抑え込めていない状況ですが、地政学上の支配トライアングルの一角を担う国としてのintegrityと面目は何とか保っているようです。

拡大する中国の影響力については、警戒はしつつも、真っ向から対立することは避け、代わりに【国家資本主義体制の拡大】という旗印の下、中ロでがっちりと組み、覇権の拡大に二人三脚で挑んでいるように思います。

中国がアフリカ大陸での勢力拡大に勤しむ中、ロシアはシリアとイランを足掛かりにして、中東地域での影響力拡大に勤しんでおり、この国家資本主義体制での支配を目論んでいるように思われます。

ロシアをさらに地政学上の支配国として君臨させるきっかけとなっているのが、今、世界経済を大混乱に陥れている【原油価格のコントロール能力】です。

OPEC Plusでの協調減産を突如やめるというチキンレースを仕掛けて、アメリカのシェール企業つぶしに臨んだわけですが、サウジアラビアからの想定外の対抗を受け、その後、原油価格が著しく下落することで双方血を流しつつも、元々の目的は達成する方向に進めてきました。その後、業を煮やしたトランプ大統領からの圧力もあり、4月9日にOPEC Plusで合意された日量約1,000万バレルの減産合意と、それを受けた域外の米国を含む産油国が約束した日量400万バレル相当の協調減産という好材料があるにもかかわらず、原油価格の上昇には至らない状況になっています。

これは、先週号でも触れましたが、コロナウイルスの感染拡大の下、一気に低下した経済と生産活動、そして運輸部門などでの需要が大幅に減少したことで、大幅な減産をしてみても、一気に減少した需要をまだ上回る供給量となったことで、先週も触れた日量にして2,000万から3,000万バレルと言われる供給余剰が、各国の貯蔵能力に限界をもたらしつつあります。

「供給過剰を解決する術を見つけられず、また世界的な需要レベルが戻る兆しがなければ1バレルあたり15ドルも冗談ではない」と先週号で申し上げたところですが、早くも4月20日にそのレベルに達し、その後も下落が止まりません。

「これが大きなエネルギーの転換、特にクリーンエネルギーへの投資と転換につながるのではないか」との楽観的な意見(IEAのBirol事務局長)も聞かれますが、それ以前にエネルギー産業を破壊しかねない状況が迫っています。

エネルギー安全保障の確保は、実際には国際安全保障の確保に直結するため、世界各国がアプローチを間違えると大きな争いの勃発は避けられない事態が予想できます。さらに、COVID-19の世界的な災禍により国内回帰が進む中、どれだけ各国に国際協調の下、問題を協力して解決する力と気持ち(will)が残っているかは分かりません。

ここでも、新たな争いと災いの種が着々と育っている気がしてなりません。

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