サンポールとドメストは役割が違う? トイレ用洗剤の使い分け方

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大型連休中せっかく家にいるのならば、本格的に取り組みたいお掃除。そこで今回は、無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』の著者で現役科学者のくられさんに、トイレ掃除の極意を披露していただきました。トイレ用洗剤の使い分け方から周りに飛び散った尿石汚れ落としに使える調味料まで、すぐに使えるワザ満載です。

トイレ用洗剤はどうして酸性のとアルカリ性のものがあるの?

トイレ用洗剤。代表的な商品としてはサンポールとドメスト。実はコレ、まったく異なる中身だというのも、少しは化学を囓ったことのある人なら知っているでしょう。

サンポールは酸性洗剤。基剤を塩酸としたかなり強力な「酸」です。

ドメストは塩基性洗剤。基剤に次亜塩素酸ナトリウムという「塩基」つまり強いアルカリを使っています。

酸性洗剤と塩基性洗剤を混ぜると塩素が発生して非常に危ない…というのは、誰でも知っていることかと思います(ちなみに実際に混ぜても反応しにくいように非常に複雑な調整が成されていますが、危険なので絶対にしないように)。

しかしここまでの危険性がありながら、どうして酸と塩基、二つの強力な成分がトイレ洗剤に必要なんでしょうか?

トイレの汚れも基本原理は水回りの水あか湯垢の類いと同じです。できあがる汚れの大半は、湯垢と同じで便中の成分がカルシウムと結合して出来上がった汚れで、そこにたちどころに雑菌やカビが繁殖することで、バイオフィルムといった形で細菌の塊という感じで出現しています。これらは強いアルカリで簡単に分解することができます。

つまり塩基性の次亜塩素酸ナトリウム系トイレ洗浄剤(ドメスト等)で洗えば基本的には綺麗になります。

しかし、トイレには尿というものが存在する以上、尿石というものが発生します。トイレを不衛生にしていると中に細菌が発生、その細菌は尿の中の尿素をアンモニアに分解するウレアーゼ酵素というものを持っています。

アンモニアは非常に水に溶けやすく、さらに溶けた水は強い塩基性となります。強い塩基性、つまりpHが高い状態になると、尿中や、水道水中のカルシウムイオンが水に溶けにくい状態になり、他の菌とかが作り出した炭酸イオンとなど結合し、炭酸カルシウムといった貝殻と同じような成分になります。これら塩基性環境で生まれた尿石は当然ながら塩基性洗剤が効きにくいモノになります。

出来上がった尿石は多孔質の硬い構造で、さらにその中に汚れや細菌が住まう形になり、さらに尿石を基地として、さらに尿石が成長します。トイレの中を掃除をさぼると急激に汚くなっていくのはこれが主な理由です。尿石の細菌基地からはアンモニアが大量発生するので、トイレ自体がアンモニア臭い、つまり臭いトイレが出来上がります。

そこでこの細菌の前線基地である尿石を破壊するのに必要になってくるのが酸性洗剤(サンポール等)。成分は塩酸なので強力に尿石を分解し、水溶性に変え汚れを落とすことができます。

しかし、尿石は水中にもできるためトイレのそこの部分である、水溜めエリアやその付近は水で酸が薄められて綺麗に汚れが落ちません。どうしてもそこの汚れを落とすとなると、新聞紙やスポンジなどを駆使して中の水を空っぽにした状態で酸性洗剤を投入し、擦りながら落とすしか有りません。

尿石は非常に硬い成分なので、汚れが慢性化するとトイレ用ブラシすら刃が立たない状態になり。それを打破するためには試薬級の高濃度の塩酸でも使わないかぎり薬品では落とすことができません。そんな危険なものを掃除には使えませんので、手袋をしっかりした上で酸性洗剤を付け、800番くらいの紙やすり(小さく切った耐水ペーパーないしスポンジやすりがオススメ)を使い丁寧に擦るしか落とす方法はありません。

なのでトイレは尿石の層ができてしまうと根本的に綺麗にするのが困難なので、普段から綺麗にすることを心がけることが大事と言えます。

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