今からでも遅くない。東京オリンピック開催は諦めた方がいい理由

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5月末までの緊急事態宣言の延長を発表した会見で、安倍首相は「感染者の増加はピークアウトし終息への道を進んでいます」と発言しました。この言葉を次なる感染拡大への「フラグ」と受け取り警戒するのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんです。山崎さんは感染の波の中国由来の第1波が落ち着いている時に手を打てなかったことを指摘。欧州由来の第2波が落ち着いている今こそ打つべき手があり、それには、東京五輪関連の施設や費用を有効活用すべきと提言しています。

感染の波のこと

緊急事態宣言が延長された。きっと日本国民の誰もがこうなることと思っていたのだろう。ニュース番組の街頭インタビューなどを見ても「やむなし」という意見ばかりである。違いがあるのは順接「~なので」からの「やむなし」か、逆接「~だけど」からの「やむなし」かくらいである。いずれにしろ国民は「やむなし」と腹をくくっているように見える。

それに比べ、国や地方のリーダーたる首相や知事たちの表情といったら情けないのを通り越して悲壮感すら漂う始末である。それでもまだ知事たちに関しては大いに同情の余地がある。中央集権国家である我が国において知事の権限においてできることは極めて限定的であるからだ。となれば、全ての責は行政府の長たる内閣総理大臣にあることになる。言うまでもなく、これは日本国憲法とそれに基づく政体に敬意を払えばこその発言である。

総理は会見で、ウィルスのゲノム解析から分かった事実として、中国からの第1波はクラスター対策により抑え込むことができた、と述べた。そうかもしれない、が敢えて言う。それがどうした。第1波を乗り越えても、続く第2波、第3波で沈没してしまえば全く意味はない。

確かなのは、このゲノム解析から弁別することができた欧米経由(第2波)の変異型ウィルスこそが高いステルス性能を持つ、真に恐ろしい「SARS-CoV-2」であるという事実が分かったということである。この第2波に関して総理はこう言った。「感染者の増加はピークアウトし終息への道を進んでいます」。これがフラグに見えるのは自分だけか。

そもそもパンデミックが起こった場合、感染拡大は必ず波状的にやって来る。総理自身が言及したスペイン風邪もそうであった。それを思うと、2月から3月にかけての政府の不用意が返す返すも悔やまれる。クラスター対策班は非常にいい仕事をしたと思う。でもそれは飽くまで対処であり、火消しである。その一方でなぜ準備を、防火対策をしなかったのか。

具体的に言えば、ICUの増床、症状の段階に応じた隔離施設の確保、PCR検査の拡充などである。然るにこの間、政府がやったことと言えば、オリンピックの新日程の調整と未だこの目で見たことのないマスク2枚くらいである。

もともと日本はICU病床が異常に少ないことがここ十数年来、集中治療医の間では指摘されていた。具体的な数字を挙げると、人口10万人当たりの病床数は僅か7.3(4という数字もある)である。因みにアメリカは34.7、ドイツは29.2である。単純計算でアメリカの約5分の1、ドイツの4分の1である。つまり日本においてはアメリカの5分の1、ドイツの4分の1の患者数でオーバーシュート状態になるのである。

また症状別隔離施設もオリンピック村を使うという手もあった筈だ。セキュリティーの観点から出入管理も比較的やり易いだろうし、あの悪名高いゴミ焼却場も汚染物の焼却に使える。さらにオリンピック需要を当て込み、大金を投じて増改築したホテル等も積極的に借り上げればいくらか経営の助けにはなったであろう。

前述のマスク466億円はもうどうしようもない。だが、まだできることも多い。オリンピック開催をあきらめれば取り敢えず相当な金を確保できる。逆に無理に行うと盛り上がらないばかりか、感染の第n波をくらうことになるかも知れない。今は祭典よりも命と生業をまもることの方が大事である。本当に、本当に分かっているのか、ここに改めて問いたい。

image by: StreetVJ / Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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