危機管理の専門家が政府「後手後手、場当たり」コロナ対策を総括

 

なぜ救急医療の第一線の医師なのかと言いますと、生死を分ける救急の現場では理屈を言わない、なすべきことを黙々と実行するというのが基本で、それが思考方法として身についており、自ずと専門家会議においても司令塔が指示すべき方針が打ち出されると考えられるからです。現在の専門家会議や諮問委員会には、理屈をひねくり回すタイプの秀才たちは揃っていても、暴れ馬タイプのメンバーが含まれていません。

これまでの専門家会議の議論は、救急医療の第一線の医師のような危機管理の基本を踏まえた議論が最優先されず、検査方法の是非といった事柄が事細かに語られてきた印象は否めません。これは「平時型」の発想で、有事に即応できるものではありません。検査方法などはきわめて重要なテーマですが、それは感染拡大を早期に抑止する大方針が実施される中で、個別テーマとして詰めが行われるべき事柄なのです。

日本なりのやり方でよいから、まずは人と人との接触を極小化するためにロックダウンを実行に移す。そして早期に収束させる方向が示される中で、医療崩壊を避け、検査態勢も確立され、治療薬の承認、ワクチンの開発にも明るさが見えてきて、経済への影響も最小限にとどめることができるのだと思います。

現在の議論は、ひとつひとつの「木」であるはずの個別テーマがあたかも「森(大戦略)」であるかの如く語られ、それが全てのように扱われてきた面はないでしょうか。本末転倒という言葉がぴったりの光景だと思うのは私だけでしょうか。

ここで申し上げたいのは、第2波、第3波や次なる感染症の襲来時に国民を守りきるために、真珠湾攻撃を受けた翌日に責任問題を解明するための調査委員会を議会に設けたルーズベルト大統領のごとく、現在進められている対策と並行して組織作りなどを始めてもらいたいということです。

必要なら、少人数の専門家による「チームB」を設置し、そこから生まれた方針や対策を専門家会議に示し、場合によっては採用することがあってもよいのではないかと思う昨今です。(小川和久)

image by: StreetVJ / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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