コロナ禍で絶好調の「出前館」にあって「Uber Eats」に無いもの

 

出前館は全国に290の配達拠点を展開している。神奈川・藤沢にある配達拠点の配達スタッフは15人。全員に配達や接客の研修が義務付けられている。ランチタイム間近の午前11時、配達スタッフが一斉に町へ。

スタッフに出前の指示を出す事務所は、いわば配達拠点の司令塔だ。藤沢駅に近いこの拠点の受け持ちエリアは半径4キロ。人口は25万人、加盟店は52店舗。

注文が入った。オペレーターが端末をタッチすると、お客と店のデータが表示される。画面には、店で商品を受け取る時間と、お客に届ける時間が表示される。お客の指定は15時ちょうど。これを確認したオペレーターは地図を開く。そこには配達スタッフ全員の現在位置が。それを見てオペレーターは適切なバイクに配達の指示を出す。

配達スタッフに連絡が入ると、必ずバイクを降りてからスマホをチェック。画面には配達先とお届けの希望時刻が表示されている。さらに店から届け先までのルートも表示される。すぐさま店に向かい、お客の希望通りの時間に正確に届ける。 

外食の危機を救う出前~加盟希望の問い合わせが殺到

東京・中央区八丁堀の拠点から出てきたのは電動自転車の配達スタッフ。出前館社長、中村利江だ。中村は時々こうして自ら出前に出ている。加盟店とお客の状況を肌で感じているのだ。

「私自身も子育て中、すごく忙しい時に帰ってきて、スーパーに買い物に行くのも大変だったんですけど、そんなひいひい言ってふらふらになって作る料理よりも、近所のプロの飲食店さんに作っていただいたのを皆で笑って食べる方がよほど楽しいなと実感しましたので、できたら皆さんにもそういう時間を過ごして頂きたいと思っています」(中村)

いま飲食業界の大きな危機が新型コロナウイルス問題だ。緊急事態宣言が出されたことで多くの店が営業を自粛。あるアンケートでは、首都圏の飲食店のおよそ6割が「このままだと事業継続が困難」だと回答している。

こうした中、出前館には、加盟を希望する飲食店からの問い合わせが殺到している。

「普段だと1日20~30軒だったのが、最近は100軒を超えています。コロナの影響もあって来られないお客様が増えているので、売り上げを確保する一つの販促として、出前館のお問い合わせにつながっているということだと思います」(問い合わせ担当・吉村玲於)

千葉・松戸の「とんとん餃子」は昭和41年創業の町中華。以前は賑わった昼時も今はガラガラの日も多い。3月は送別会のシーズンで、宴会の予約が入っていたが、新型コロナの影響でキャンセルが相次いだ。

「影響は大きいですね。死活問題。3月の売り上げはざっくり50万円くらいなくなっている」(店主・大内康弘さん)

そんな状況を救ったのが出前館だ。もともと加盟しようと考えていたが、新型コロナの影響を受け、2月に加盟した。すると、出前の売り上げが月に50万円ほどになり、宴会のキャンセル分を何とか補填できたという。

「入ってなかったらと考えたら、ぞっとしますよね。救われた、救世主」(大内さん)

「飲食店さんは、売り上げが4割減、5割減というお店もたくさん出てきているそうです。私たちは作ることはできないんですけど、作ることはお店にやっていただいて、お届けすることで、お店のおいしい料理を少しでも味わっていただけるようにお手伝いできればなと思っています」(中村)

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