新型コロナウイルスに関連した各都道府県の知事の会見には、必ず手話通訳者の姿があります。実は、今年3月1日時点では11道県にしか手話通訳者がいなかったのをご存知でしょうか。東京都ですら手話通訳が付いたのは3月30日でした。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』著者で健康社会学者の河合薫さんは、以前のことはさておき、コロナ禍での前向きな変化と捉えています。そのうえで、通訳者が伝えやすい言葉選びを知事たちに求め、バリアフリー先進国ニュージーランドのように「手話が普通に使われる社会」を希求しています。
伝わらない知事たちのメッセージ
「いったいなぜ、今までやっていなかったのか?」と驚き、でもってちょっと残念で、それでも、うん、良かった、そんな気持ちになる報道がありました。
全国47の都道府県すべての記者会見で、手話通訳が導入されることになったというのです。きっかけは「新型コロナウイルス」です。連日、感染状況やら自粛要請と対策などを知事が発信する中、「手話通訳を入れて欲しい」との要望が聴覚障がい者団体から相次いだそうです。
NHKの調べでは、3月1日の時点で知事の会見に手話通訳を導入していたのは、北海道や鳥取県などわずか11の道と県だけでした。しかし、その後、急速に広がり、今では各地で「きちんと伝えるため」の試行錯誤が続いているといいます。
手話は手だけではなく、顔の表情や口元もメッセージ伝達に意味を持つため、マスクはNGだし、フェイスシールドをすると光って見えない。おまけに、専門用語や新しい言葉が多いので表現方法を統一する必要もあります。
例えば、ある通訳さんは「緊急事態宣言」を文字情報で伝え、ある方は「緊急を要する宣言」と言葉の意味で伝えました。「ロックダウン」「クラスター」なども、同様に伝え方が難しかったそうです。そういえば河野防衛大臣が「クラスターを集団感染、オーバーシュートを感染爆発、ロックダウンを都市封鎖。なんでカタカナ?」とつぶやき話題となりしたが、日本語に置き換えても難しいのです。とはいえ、今ではそういったカタカナ言葉も、普通に使われているので手話の世界でも表現方法が統一化されれば、変わってくるのかもしれません。
いずれにせよ“伝える試行錯誤”の中で、つい笑ってしまったのが「知事のコメントそもそも」です。「知事たちの言ってることがよくわからない」というのです(笑)。
文章が長い、主語がわかりづらい、書き言葉が多い、曖昧な表現が多いなどなど、とにもかくにもわかりづらい。そのとおりですよね。この機会に、是非「リーダーとして伝えたいこと」をきちんと考え、自分の言葉を綴って欲しいですね。
一方、SNSでも話題になっていましたが、沖縄の玉城知事は、手話通訳の人に手話で挨拶をしたり、記者会見の合間にも時折、手話を入れたり。とてもとても温かいものでした。しかも、沖縄では2年前から第3水曜日を「手話推進の日」として、ホームページで紹介しているんです。例えば「梅雨」は、顔に手をあてて梅干しの顔をして「梅」、手を上下させて「雨」といった具合です。
また、海外に目を向けてみると、ニュージーランドでは世界にさきがけて「手話を公用語」に指定しています。ニュージーランドには3つの公用語があり、1つは英語、もう1つはマオリ語、そして3つ目がニュージーランド手話という、ニュージーランドの手話です。各地で手話のイベントや講習会が行われていて、たくさんの人たちが手話のコミュニケーションを楽しんでいるのです。
今回のコロナ禍でもひときわその発信力に注目があつまった、アーダーン首相は、いつも手話通訳者を同行させ、いかなる会見でも手話通訳が必ず入ります。テレビの画面の半分を、手話通訳が占めるようなレイアウトです。アーダーン首相自身も、時折、手話を交えて会見をしています。バリアフリー先進国ならではの計らいです。
コロナは私たちの生活にさまざまな変化をもたらしていますが、「手話が普通に使われる社会」に日本もなればいい、いや、ならなきゃだと思っています。みなさんの意見もお聞かせください。
image by: 東京都公式YouTubeチャンネル