給付金問題の元電通マンも参加した金脈と人脈の「前田ハウス」

 

しかも、この再委託には、重要なルール違反の疑いが濃厚なのだ。

2006年8月25日に財務省が各省庁に通達した「公共調達の適正化について」のなかに、「一括再委託の禁止」という以下の項目がある。

委託契約の相手方が契約を履行するに当たって、委託契約の全部を一括して第三者に委託することを禁止しなければならない。

今回の場合、経産省の委託契約の相手方はサービスデザイン推進協議会である。同協議会は契約の全てを第三者である電通に委託することはできないのだ。全てではない、97.3%の再委託だ、という理屈が通用するだろうか。

同協議会から電通への再委託について、経産省OBの衆院議員、泉田裕彦氏はツイッターで、こう疑問を投げかけた。

泉田氏が通産官僚だったのは2004年夏までで、前記の財務省通達が出される前だったが、それでも50%以上を再委託できないという省内ルールがあったというのである。98%近い再委託など、もはや丸投げといっていいレベル。トンネル法人と批判されても強く反論できないはずだ。

さて、この不当な委託、再委託の責任は誰にあるかと問われれば、梶山経産相と任命者である安倍首相に行きつくだろうが、直接的には、中小企業庁長官、前田泰宏氏の名をあげざるをえない。

このところ、国会からお呼びがかかる回数は主役級で、役人というより商人のような関西弁キャラクターが異彩を放っている。このざっくばらんな雰囲気でビジネスマンをひきつけているのだろう。週刊文春6月18日号の記事によると、無類のパーティー好きで、アメリカで「前田ハウス」なる交流会を開いていたそうなのである。

米テキサス州はオースティン。その地で毎年3月に開かれる大イベント「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」に2017年以来、前田氏とともに参加した人たちが宿泊し、パーティーを楽しんだのが「前田ハウス」だ。当時、前田氏はITベンチャーなどを育成する経産省商務情報政策局担当の審議官だった。

そこに、サービスデザイン推進協議会の業務執行理事である元電通社員、平川健司氏が参加していたことを、前田氏と平川氏の親密な関係を裏付ける事実として文春は報じ、野党も問題視している。前田氏は商務情報政策局を担当するより前から平川氏と付き合いがあったと国会で答弁している。

電通、パソナ、トランス・コスモスが設立した同協議会が「おもてなし規格認証」事業をはじめたのは、2016年5月。第1回目の「前田ハウス」が開かれる10か月ほど前のことだ。当時まだ電通社員だった平川氏に前田氏が目をつけて「おもてなし規格認証」のアイデアを出させ、電通に在籍したまま業務執行理事に据えた可能性がある。

なぜホテルではなく、民泊だったのかというと、「SXSW」開催期間中は、どこのホテルも予約がとりにくいため、民泊サイト「Airbnb」を利用したのだとか。

サウス・バイ・サウスウエストは、もともと音楽の祭典だったようだが、映画祭が加わり、最近では新興企業の展示会、講演会、パーティー、コンテストも開かれ、街ぐるみの大規模なイベントとなっている。

そんな催しを、経産省の関係者が見に行くこと自体には何ら違和感はない。2017年から前田氏は、数名の部下を引き連れて、そのための出張をしており、現地で日本のビジネスマンと親睦を深めることもあるだろう。

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