戦略論的な大混乱
そこで、図1の2010年の地図をもう一度見て頂くと、今北朝鮮が到達しつつあるのがほぼこの段階と言える。日本全土に短・中距離ミサイルでロフテッドなども含めた多様な攻撃を仕掛けられるのに加え、グアムやハワイに到達可能なIRBMも持つようになった。だから、秋田と山口でそれを真下から撃ち落とす態勢をとって対米忠誠心の証としようとしたのだが、さてそこで、北より遥かに圧倒的な中国のミサイルについては何も対策を講じなくていいのだろうか。さらに、ロシアは?
こうしたことを何ら論理的に整理せず、一体何から何を守るのかも定かならぬまま「ミサイル防衛」とか言って、国会にも国民にもまともな説明もできないでいるのが安倍政権である。
従って、単にブースターの落ち方がどうかとかのレベルではなく、そもそもミサイル防衛とは何かから説き起こすまともな戦略論へと立ち戻ることが必要なはずだが、それ抜きに、「ならば今度はやはり敵基地攻撃能力だ」とあらぬ方向に暴走していきそうなのが安倍首相の言う「国家安全保障戦略(NSS)」改定論である。イージス・アショア導入論の最初からの間違いの1つが、上記「第2」で述べたように、発射基地が分からないのに軌道計算で打ち落とせると思った時代錯誤なのであるから、それを反省するなら、そのどこか分からない発射基地を攻撃する能力など持っても役立たないと気付かなければおかしい。
このようにして、この国の戦略論的大混乱は安倍首相下ではますます深まっていくのである。
(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年6月22日号より一部抜粋)
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