【書評】経営の神様・稲盛和夫を取り巻く状況を一変させた考え方

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京セラの創業者として、またJALの再建者としてその名を知られる稲盛和夫氏。彼の人生はしかし、決して順風満帆なものではなかったと言います。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介しているのは、そんな稲盛氏の最新巻。失意の連続だった氏を取り巻く状況を一変させたという考え方も記されている一冊です。

偏屈BOOK案内:稲盛和夫『心。』

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稲盛和夫 著/サンマーク出版

「心。」漢字一文字に句点という、シンプル過ぎるタイトル。副題もない。表紙では「。」の上に「人生を意のままにする力」と11文字が配置されているがこれは表紙デザイン上の処理であり副題ではない。稲盛氏の著作は「生き方」「働き方」「考え方」などもあるが、おそらく偏屈老人には無用の書だろう。

少年期から社会に出るまでの彼の人生は、挫折と苦悩、失意の連続だった。そんな人生の流れが大きく変わったのは、大学を卒業し京都にある碍子メーカーに就職してからだ。不況時の就職難でようやく入れた会社は、銀行管理下のボロ会社、同期は次々と辞め、とうとう彼だけになる。どんな環境であれ、できる限りの仕事をしようと腹を据え、泊まり込みも度々、研究開発に没頭した。

やがて成果が出始め、周囲からの評価も高まり、ますますやり甲斐を感じて研究に邁進、当時世界的に見ても先駆的な独自のファインセラミックの合成に成功する。能力向上や環境改善があったわけではない。「ただ考えを改め、心のありようを変えただけで、自分をとりまく状況が一変した」というのだ。

人生とは心が紡ぎ出すものであり、目の前に起こってくるあらゆる出来事はすべて、自らの心が呼び寄せたものである……少年のころつかんだその法則を、このときあらためて実感し、人生を貫く“真理”として心に深く刻みつけることとなったのです。

以来、彼の人生は常に「心」について探求を重ね、自らの内側に目を向けて、正しい心のありようを問い続ける日々であったという。

なかでも人がもちうる、もっとも崇高で美しい心──それは、他者を思いやるやさしい心、ときには自らを犠牲にしても他のために尽くそうと願う心です。そんな心のありようを、仏教の言葉で「利他」といいます。

たしかに利他に基づいた『善なる動機』から発していると確信できたことは、かならずやよい結果へと導くことができたのです。

第二電電の設立、日本航空の再建が好例。

心を高めること、そして「利他の心」で生きること、この二つは一体かつ不可分で、他のために尽くすことによってこそ心は研磨され、また美しい心をもつからこそ、世のため人のために働くことができるのです。

すべては“心”に始まり、“心”に終わる─それこそが、私が歩んできた八十余年の人生で体得してきた至上の知恵であり、よりよく生きるための究極の極意でもあります。

「奇跡」と言えるのは、彼が仕事で海外に赴くと、着く寸前まで荒天だったのが一転して雲一つない青空になる。滞在中は好天に恵まれ、彼が空港から飛行機に乗り込んでその地を発つと、とたんに暗雲がたちこめ雪が降り出す。この類いのことが度々。同行者はよく経験するという。このエピソードを読んで分かった。彼と会ったことのある人は、この本に書かれたことを理解できる。

彼と会ったことのない人は、この本に書かれたことをよく理解できない。正直、何言ってるんだ、とわたしは思っていたが、自転車で走行中に突然閃いた。著者は悟りにいたった人なのだ。まっさらな心の、物事の真実の姿が見える人なのだ。だが、紙に印刷したものには、その力が宿らないのではないのか。理解力のないわたしがひねり出した「稲盛和夫聖者説」いかがでしょう?

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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