コロナの失敗を隠せ。安倍政権が「専門家会議」を急ぎ廃止した訳

takano20200706
 

以前掲載の「あまりにも不可解。新型コロナ専門家会議『廃止』発表のウラ事情」でもお伝えしたとおり、専門家会議の廃止を巡ってにわかには信じがたいような「ドタバタ劇」を演じた安倍官邸。なぜ総理及びその周辺は、今回のような失態をさらしてしまったのでしょうか。ジャーナリストの高野孟さんが自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』でその真相に鋭く迫るとともに、6日に発足した「分科会」のメンバーに対して苦言を呈しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年7月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

専門家会議に相談もせずにその廃止を一方的に公表――コロナ対策の大失敗を隠したい一心の安倍首相とその側近たち

西村康稔コロナ対策担当大臣が6月24日、政府の「専門家会議」を廃止すると唐突に発表したのは、安倍政権のコロナ対策の大失敗を隠蔽――と言うと少し言い過ぎかもしれないが、そのプロセスを詳細に検証されることを避けたいがために、早くその痕跡を消去してしまおうと思う「逃げの心理」の現れだった。

この政権の最大特徴は、何事に於いてもきちんと説明せずにグズグズダラダラと弁解しているうちに証拠がどこかに行ってしまうというウヤムヤ体質にあるが、今回もまさにそれで、本来であれば、この段階で初動以来の約6カ月を徹底総括して問題点を析出し、来たるべき第2波、第3波に備えるのでなければならないというのに、そこに出来るだけ触れずに前に進むフリをすることで安倍晋三首相、今井尚哉補佐官ら政権中枢の面子だけを救おうという姑息さである。

専門家会議自身が廃止を知らなかった?

実は6月24日の夕方には、専門家会議の尾身茂=副座長らが予定された記者会見を開いていた。そこで尾身氏らは、専門家会議が行う科学的見地からの提言とそれを受けて政府が打ち出す政治的立場からの政策との関係について、一定の整理をしようと試みていた。「専門家会議が政策を決めているかのような印象を与えてしまったが、政策に責任を負うのは政府であり、専門家会議との役割分担を明確にすべきである」との趣旨を尾身氏が語っている最中に、別の場所で会見した西村大臣が専門家会議の廃止を発表したという第一報が入り、尾身氏は「えっ、もう1回言って」と、非常に驚いた様子だったという。

してみると、西村大臣は、当事者である専門家会議それ自身に相談することもなく、また閣議もしくは(それとほぼ同義の)新型コロナウイルス感染症対策本部の議決を得ることもなく、恐らくは安倍首相、今井氏、西村大臣の3人だけの言わば私的会合で専門家会議の廃止を急ぎ公表する方針を決め、当の専門家会議が記者会見を開いている最中に別の場所で会見してそれを発表するという奇妙な行動に出たことになる。

何をこんなに慌てふためいて、後に陳謝しなければならないような行動に出たのか。あくまで推測に過ぎないが、専門家会議がこの夕方の会見で「専門家会議と政府の役割分担の明確化」を主張するらしいと聞いて、専門家たちが政府の政策の遅れに批判がましいことをいうのではないかと疑心暗鬼に陥り、ならば先手を打って同会議の廃止を発表してしまったほうがいいと、いかにも今井氏らしい小賢しいことを考えたのではあるまいか。この様子をトップ特集で取り上げた『週刊新潮』7月9日号は、

「政府は、政府との軋轢を公表するような会見を専門家会議が開くことを、苦々しく思っていて、政府が常に後手に回っていたとの印象を抱かれないように、先回りして専門家会議の廃止を発表したフシがある」

との政治部記者の解説を引用している。

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