コロナの失敗を隠せ。安倍政権が「専門家会議」を急ぎ廃止した訳

 

専門家たちのストレスの原因

上掲『週刊新潮』が引いている専門家会議メンバーだった武藤香織東大医科研教授によると、「2月中旬ごろ、政府も社会も感染拡大への危機感が薄い中、専門家の間では危機感が高まり、ストレスが溜まっているように見えた」「3月2日、専門家会議の『見解』から『無症状の人が感染させる』という一文が削られた。……専門家側は、時間的な制約や政府を説得する材料の少なさから、削除を受け入れた。しかし3月19日の『提言』には“無症状の方が本人は気づかずに感染を広めてしまう事例が多い”と明記された」という。

つまり、無症状者からの感染可能性という今回のウイルスの最大と言っていい特徴、従って防疫体制を敷くについてカギとなる基本的な事実を巡っても、それをどう公表するかについて専門家たちと政府との間に軋轢があったということである。それを専門家側から見れば、政府の危機感が薄いので自分たちが率先、世の中に向かって発信しなければならないという焦りに繋がったろうし、逆に政府側ではそういう専門家たちの態度を「前のめり」的な越権行為だと捉えることもあったろう。そういう政府の側の専門家会議への不信の積み重ねが、今回の西村大臣の奇行へと繋がっているのだろう。

それにしても、なぜ政府側はそんな基本的な事実を公にしたくなかったのか。そこはそれこそ検証が必要だが、厚生労働省にはこれまでの感染症対策の経験に基づくクラスター追跡の手法へのこだわり、自分らの直系の保健所に検査の権限を集中させておきたいという縦割り意識、などが働いていたのだろうし、官邸には東京五輪を中止させないためにできるだけ感染者数を少なく見せたいという政治的な思惑が働いたのかもしれない。

それでいて、日本が今のところ死者も感染者も相対的に少なくて済んでいるのは、会員制情報誌『選択』7月号「コロナ『日本モデル』は単なる幸運」によれば、アジアで流行したウイルスが欧米のそれと比べて毒性が低かったこと、日本社会がマスクの着用に慣れていたことなど、いくつかの幸運の重なりによるもので、誰にもこれを合理的に説明することはできない。ということは、第2波、第3波の来襲を防ぐには何をすべきなのかの戦略はない、ということである。

その根本的な問題を脇に置いたまま、6日には新たな「分科会」が発足する。旧専門家会議の副座長だった尾身氏が新分科会の会長、同座長だった脇田隆字=国立感染症研究所所長が同副会長という格好で、一旦は「廃止」と宣告した旧専門家会議との連続性を強調した上、連合労組の副事務局長、元キャビンアテンダント、鳥取県知事、読売新聞常務など、そう言っては申し訳ないが何の役にも立ちそうにない人たちを寄せ集めていて、これでますます日本の対策の戦略性は疑問視されることになるだろう。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年7月6日号より一部抜粋)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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