4、コミュニティ運営スタッフにはあらかじめ報酬を決めておく
そもそもこのコミュニティはお金を稼ぐためのものでは無いはずです。だからこそお金のことは会計を立てて、明確にしておくことが必要なのです。会計情報は必ずオープンにして、何にいくら使って、今何が余っているのか。できればそれ用の口座をちゃんと開いておくといいですね。とくに人数が多くなってくると、例えば1カ月1人5000円でも200人集まったら100万円になります。
100万円を年間で考えると1200万円になります。さらに、年間1000円以上のお金が動くと、今度は消費税の納税義務が発生して税務署の監査対象になるわけです。
こうなってくると税務署が入るということが発生しかねないので、個人の口座ではなくてちゃんと専用の口座を設けてお金の出し入れを明確にしておくことが大切です。収入があった場合はちゃんとそこに入れて、支出がある場合はそこから使うというルールを徹底すること。
また、儲かったお金は全部ため込むのではなく、コミュニティ運営において大変な作業をやってくれているメンバーに関しては、事前に報酬を決めておくといいですね。
例えば、毎週1回とか2回、広報を作ってそれを毎週みんなに配信しなければいけないとか、業者とのやりとりとがいっぱいあって手間がかかるといったときです。会社の仕事に支障が出るまでじゃないにしても、他のことに支障が出るようなレベルでタスクが発生している可能性もあります。こういう事はある程度の報酬がないと不満がたまりやすくなります。
5、1回きりの頼み事にはお金は出さない。そのワケは?
逆に、例えばキャンパスで飲み会の場所取りをして幹事をするとか、1回だけみんなにメールを送るとか召集の依頼を送るとか、「1回だけのものでそこまで大変ではないでしょう」と言うものに関しては、お金を出してはだめです。なぜかと言うと、お金を出してしまうとお金を得るためにやる人が出てきちゃうからです。そうすると、本来このコミュニティがお金を目的にしていないものだったとしたら、入ってきた人の目的がずれてきてしまうからです。
単純に善意でやっていたことがお金を稼ぐための手段に変わる。そうすると次が何が起こるかというと「じゃあ、次何をしたら稼げるのか」ということになっていきます。それをやるとコミュニティの運営も商業目的に変わってしまいます。
6、お金(報酬)が絡むと目的が変わる「アンダーマイニング効果」
ちなみにちょっと面白い実験があります。いつも家の壁紙に落書きをする男の子がいます。この落書きを止めさせる良い方法があるんですよ。何だと思いますか?
落書きをするたびにお小遣いあげるんですよ。それを1週間か2週間続けると、だんだんその子供は楽しくてやっていたはずなのに、お小遣いをもらうために落書きをするようになるんですよ。落書きしたからお小遣いをちょうだいっていうのも変な構図ですけどね。だけど、ある時から「お小遣いをあげるのをやめる」と言うんです。
その場合、どうなるかと言うと、その男の子はお小遣いをもらうために落書きをしていたのでお小遣いをもらえなくなると落書きを止めるんですよ。
落書きするなと怒っても、楽しいからやっちゃうんだけど、お小遣いをもらうためにやっていたのに、お小遣いをもらえなくなったらやめるんです。つまり、最初は落書きが好きで自発的にやっていたのに、お金を与えられたことによって落書きする目的が「お金をもらうこと」にすりかわってしまったのです。
コミュニティ運営でも、これと同じことが起きます。最初は自分たちがやりたくてはじめた行動、好きでやっていた行動(内発的動機)が、お金という報酬(外発的動機)が絡んだことによって、報酬を与えられないとやる気がなくなってしまう現象のことを「アンダーマイニング効果」と呼びます。「お金のためにやる」というふうに変わってしまうと、動かない人たちが出てきてしまうのです。
image by: shutterstock