世田谷区の定額給付金10万円の振り込み遅れは都知事選が影響か?

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フタをあけてみれば小池百合子都知事の圧勝で終わった2020年の東京都知事選挙。その勝利に少なからず影響を与えたのが、東京・世田谷区の新型コロナの「特別定額給付金」の給付遅れだと語るのは、メルマガ『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』連動メルマガの著者でコンサルタントの児島康孝さん。児島さんは、同区の区長が支援した立候補者のイデオロギーと、同区で給付の振り込みが遅れたことに、ある因果関係があると持論を展開しています。

所持金100円でも、世田谷区「10万円渡さない」。都知事選にも影響

7月5日(日)に即日開票が行われた東京都知事選。

選管発表では、翌7月6日午前2時17分に確定していますから、7月5日午後8時過ぎの開票から、約6時間で、投票総数620万票を開票しています。結果は、選管発表で次のようになりました。

東京都知事選挙

当日有権者数 1129万229人
投票者数 620万9940人
投票率 55.0%(前回59.73%)

小池百合子・当選 366万1371票(得票率59.7%)

宇都宮健児 84万4151票(得票率13.8%)

山本太郎 65万7277票(得票率10.7%)

小野泰輔 61万2530票(得票率10.0%)

投票率は、最近の知事選としては55%あればまずまずです。宇都宮氏、山本氏が伸び悩んでいます。

この要因の1つとして、世田谷区では、こんなことが起きていた(起きている)のです。

所持金100円でも「10万円渡さない」

国の定額給付金10万円は、それぞれの自治体によって振り込まれていますが、世田谷区では、6月初旬の予定が1カ月以上遅れ、7月に入っています。

当然、生活に困窮したり、食べ物を買えない、家を追い出されるというような悲鳴があがっています。

しかし、世田谷区では、1カ月以上遅れているにもかかわらず、所持金100円程度の人にも「10万円は渡さない」と言っているのです。

もはや「闇」対応

理由について、「窓口給付はコロナウイルス感染防止のため行えない」とも言っています。しかし、世田谷区の本庁舎、出先機関をのぞきますと、ともに通常通りに開かれています。つまり、透明の仕切りなどを使って通常通りに窓口業務を行っていますが、給付金だけはなぜか、感染防止のために行わないらしいのです。

もっとも、これは、すべての人に窓口給付すべきという話ではなく、所持金が非常に少ないとか、破たんの危機にあるとか、家族の食料が買えないとか、そういう場合に限っての話です。

通常の振込給付の場合でも、金融機関で出金するわけですから、感染防止の観点では、あまり意味ありませんね。

以前、東京都内の台風の避難所で、ホームレスが住民票がないからと断られ、批判を受けたケースがありましたが、コロナウイルス問題で、2~3カ月間も、収入が激減したようなケースでも、世田谷区は、すぐに10万円は渡さないと言い張るのです。もう7月になっているのですが。

給付金専用ダイヤルは、民間オペレーター

当然、苦情を言う住民が増えるわけですが、定額給付金の専用ダイヤルは委託会社のオペレーターです。しかも、具体的な進捗状況は、ほとんど答えられず、要するに時間をかけて適当にあしらって、世田谷区の職員が対応しなくて済むように「防波堤」を雇っているわけです。

給付予定を段階的に引き延ばし

しかも、世田谷区の発表は、意図的に給付時期を後ずれさせて発表しています。

  • 6月初旬
  • 6月上旬
  • 申請から2週間後(つまり6月中旬)
  • 6月下旬
  • 6月末(そして7月へ)

しかし実際は、6月前半は、郵送分6000件しか振り込んでおらず、6月後半から1日あたり8000件から1万件ペースです。

これでは当然、最初から7月給付は、ほぼ確定的です(世田谷区の対象は、約49万世帯)。

当然ですが、最初の方の時期の6月1日、2日、3日に到着した郵送分は、その後も、物理的に増えも減りもしませんので、この対応量が日ごとに増えることはないのです。

しかし、最初に「7月になった」と言えば、増員しろという話になるので、当初の「計画」どおりに給付が1カ月遅れになるよう、6月下旬まで振込件数を発表せずに隠してきたのです。

その背景にあったのが、都知事選です。

左派の世田谷区長、宇都宮氏・山本氏を支援

現在の世田谷区長は、東日本大震災の直後に「反原発」を旗印に入ってきた人で、今回の都知事選でも、宇都宮氏や山本氏の活動をツイッターで報告し、支援しています。元社民党で左派の人です。

世田谷区では、10万円給付金は5月28日から区への申請書を送り始めましたが、6月前半は、6000件の振込の進捗しかなく、事実上、放置しています。

そして、その間、世田谷区長は、ツイッターで政府の対応の批判を繰り広げていたのです。

もちろん、政府に対して批判すべきことは多いのですが、給付金を遅らせてまで、マッチポンプのように政府批判を繰り返すのは問題です。

この世田谷区長の思惑としては、給付金を遅らせることで、政府批判、現職知事への批判が出て、その受け皿として、都知事選で宇都宮氏、山本氏の得票が増えるという算段だったのでしょう。

しかし、これでは宇都宮氏、山本氏にとっても「ありがた迷惑」です。

都知事選の結果は、まさに逆効果

このような給付の遅れを「演出」していては、左派にとっても逆効果になるという話は選挙期間中も出ていたのですが、開票してみますと、やはり宇都宮氏と山本氏の票は少ない印象です。

漁夫の利は、現職の小池氏でした。

今回の給付金の対応に当然、世田谷区の住民はカンカンで、世田谷区長が推す候補には絶対に入れない、投票先を変えた、という話が出ていました。

また、世田谷区以外の住民でも、世田谷区で左派の区長が10万円を払わないのを見て、左派の宇都宮氏や山本氏がもし知事になったら、世田谷区長と同じように住民いじめや低所得者への経済的迫害を始めるのではないかと連想が働きました。

当然、宇都宮氏や山本氏に投票で入れる人は少なくなります。

ですから、今回の都知事選は給付を1カ月遅れにしたうえ、所持金100円でも「10万円は渡さない」という異常な姿勢を示している世田谷区の状況が、少なからず影響を与えたと言えるでしょう。

image by: Picturesque Japan / shutterstock

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1988年神戸大学卒。独立UHF局、TBS系、FNN系などで報道記者、カメラマン。 ニューヨーク金融情報、FRB・ECBなど中央銀行の動きをウォツチ。 最新経済情報や、欧米勢力の動きを伝え、まぐまぐマネーボイスにも寄稿中。

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【著者】 児島康孝 【月額】 ¥330/月(税込)、初月無料 【発行周期】 毎週 金曜日 発行予定

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