「軽い」だけで中身なし。小池都知事キャッチフレーズ作戦の功罪

 

ナラティブ

【毎日】は2面の記者コラム「火論」。書いているのは大治朋子専門記者。タイトルを以下に。
族・闘魂女子の劇場

小池知事の圧勝の背景には、「リスクを伴う変化より現状維持の選択肢を好む」私たち有権者の傾向と、認知上のクセとしてナラティブ(物語)、いわゆるストーリー志向があるとする。候補者の語る物語でザックリと選ぼうとする傾向が私たちにあり、特に「勧善懲悪ストーリー」に魅せられやすいと。初めて登場した時のビル・クリントンがそうだったという。

ヘブライ大学のハラリ教授によれば、「ホモ・サピエンスはものを語る動物であり、数やグラフではなく物語で考えるし、この世界そのものも、ヒーローと悪漢、争いと和解、クライマックスとハッピーエンドが揃った物語のように展開すると信じている」と述べているという。

筆者によれば「小池劇場」は秀逸で、「崖から飛び降りる」「オッサン政治の打倒」「都民ファースト」を合い言葉に、「政治屋に挑む庶民の味方として大立ち回りをして見せた」とする。

「40年近くも一貫するイメージを発信し続けていて比類ない」としつつ、やはり「1期目で掲げた7公約のうち実現したのは一つだけ」と小池氏を批判。それでも都民は小池氏を信任したのだから、「物語の発信に終わらず言葉を守り、期待に応えて欲しい」と。

●uttiiの眼

小池氏に対して大変好意的な分析。現職を選択する有権者の傾向もよく分かるし、ナラティブの話もその通りだろう。しかし、小池氏がそれほど魅力的なナラティブを発信し得ていたかどうかは別だろう。ナラティブというような組み上げられたストーリーではなく、もっと雑なイメージのようなものではないのか。だからこそ、大勢の有権者を短い期間に籠絡できたのではないか。

現職有利の訳

【東京】は2面の解説記事「核心」。見出しを以下に。
コロナ選挙「現職有利に」
感染対策で存在感◆低投票率 新人浸透に高い壁

コロナ禍の選挙が本当に現職有利となっているのかについて、細かく分析している。選挙戦の様相は様変わりしていて、人の密集を避け、多くの陣営が集会や街頭演説を控えている。ネットやSNSを通じて政策や考えを訴えるのが一般的な戦術に。特に、現職はコロナ対応を理由に街頭に立たないケースが目立っていると。

分析の対象は、合計40の選挙で、総務省が各都道府県の選挙管理委員会に対し、地方選におけるコロナ感染防止対策の徹底を呼び掛けた2月26日以降の選挙で、知事選が熊本と東京、東京23区長選は目黒区と港区。市長選は全国55の市で行われたが、19が無投票、36市で選挙戦になった。この40の選挙のうち、現職が立候補したのは35。現職当選は25だったので、現職の勝率は71.4%。コロナ禍の影響かどうかははっきりしないものの、原色が強い選挙だったことは明らかだとする。

専門家は、「街頭で有権者と触れ合う従来型の選挙ができないことは新人には痛い。投票率が下がった上に、有権者の関心が直近のコロナ対応にばかり向かえば、コロナに立ち向かう現職の仕事ぶりだけが好意的に見られるという極めて現職有利な状況がつくられる」(法政大学大学院・白鳥浩教授)と。

●uttiiの眼

街頭に立たず、ネットで選挙運動を行った小池氏の闘いぶりが「特殊」に見えていたが、そもそも熊本県知事選挙で蒲島知事がやはり街頭に立たない選挙戦術を選択していたことになる。コロナ禍での選挙は、やはり現職に有利ということが言えるだろう。

image by: 小池百合子公式Facebook

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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