失意のどん底に叩きつけられた、最近の自治体職員の「発言」

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長年、要支援者に関わる仕事を続けてきた、メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』著者でジャーナリストの引地達也さん。引地さんは自身のメルマガの中で最近、自治体職員の「障がい者観」に失望した体験を明かし、そうした行政職員の態度や考え方に、森友学園をめぐる公文書改ざんで職員が自殺した件を重ね合わせ、「人との向き合い」というものの大切さを説いています。

「人と向き合わない」行政の障がい者観と遠い「学び」

要支援者のための学びの場である「みんなの大学校」の準備や今年度の文部科学省から委託を受けた各種事業を進めるにあたり、地域の自治体と交流する機会が増えている。

コロナ禍から少しずつ本来の活動にシフトする中で、久々に生でコミュニケーションを取る嬉しさも最近の自治体職員の言葉にその嬉しさも急降下し失望のどん底にたたきつけられてしまった。

それは、自治体職員の相次ぐ「障がい者観」であり、私が語る「学び」に対するイメージとのギャップである。

ここに、要支援者の社会での居心地の悪さがあることに気づかされる。

自治体は「支援」を理由に各個人の人生を現存の福祉制度をあてこむことで、仕事を全うしているような気分になっているのかもしれないが、要支援者が求める将来像に向けては、それぞれが個性があるように、「学び」を含めた新しいバリエーションを考えたい。

その根本には「新しい障がい者観」が必要となる。

各自治体のそれらの認識を糾弾するつもりはないし、本コラムのタイトルの「やさしい未来」に向けて、この場を「人を責めない場所」にするのが基本方針である。

それでも、行政官の言葉は障がい者の実態を知らないことで出ているとしか理解できず、それは無知からくるものであり、単純に実態を知ることで無知は解消されるのだけは記したい。

無知を解消する努力は行政だけではなく責任のある仕事をする上では常識だ。

しかし、無知を「言い逃れ」でごまかす人たちがいる。

「ある」のに「ない」と言ってみたり、実態を示さないまま責任を痛感してみせたり、無知を認めるところから理解が始まるはずだが、向かうは逆方向のようで、コミュニケーションの文化発展のためにも最近の国政における政治家と官僚の言葉には、社会の信義に関する無知がはびこり過ぎて、正しいことが何かさえもかすんでしまいそうな末期的な状況だ。

先日、みんなの大学校をスタートするにあたり、医療関係者から「引地さんはどこに向かうのか」と質問され、あらためて自分がどのように答えれば最も事実に近く、かつ真意が伝えられるかを考えた。

福祉サービス事業から「学び」を重視した支援事業は私にとって地続きではあるものの、やはり大きな方針転換のようにも見えるらしい。

行政職員の発言から浮かび上がる障がい者観はその私がやるべきだと考え、向かうべきだと志すための負のガイドラインでもある。

この行政の言葉と私を隔てるものは「人を相手にするかどうか」に尽きる。障がい者の人としてのニーズに成長したいという思いを感じるとき、「学び」は自然に行き着くキーワードだが、制度がないから、と言ってそのニーズを受け止めずに、「人を相手にする」のを避け、自分の知る範囲内で整理することで仕事を全うしようとするメンタリティを改めるにはどうしたらよいだろうか。

「ある」ものを「ない」と言う無責任さは、人を相手にしていないから平気で跋扈する。

そのモノ扱いのような対応は、森友学園問題で公文書の改ざんを命じられた近畿財務局職員の自殺につながった。

その真相を求めて声を出し始めざるを得なかった遺族の行動は、起こったことを深く理解しようと知に向かう姿勢さえあれば避けられたはず。

そこには人との向き合いが必然になる。

人と向き合えば、人が成長すること、学ぶことの権利と有効性を感じられる体質になるはずで、その体質になればおのずと障がい者観も変わってくる。

行政職員の障がい者観と人と向き合う仕事をするかどうかはつながっている、と思う。

それを多くの行政職員に気付いてほしい。

image by: Shutterstock.com 

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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