【書評】中国の学校図書館に必ず置いてある日本の漫画はナニか?

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「日本の作品は僕を中国政府による洗脳から救ってくれた」……そんな、穏やかではない「告白」が記された書籍が話題となっています。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんがレビューしているのは、日本のアニメを絶賛する、「反日」ではない中国人が記した一冊。我々日本人が気づけない指摘もなされている良書でもあります。

偏屈BOOK案内:孫向文『中国人の僕は日本のアニメに救われた!』

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孫向文 著/ワック

1983年中国杭州市生まれ、2013年来日、ネットや雑誌で漫画やコラムを執筆。反「反日」の著者が、愛する日本の数々のアニメを語るとともに、その背景に流れる日本人独特の思想や精神性、そして作品内容から浮かび上がる日本の現状を、彼なりの解釈で論じる。日本の作品は僕を中国政府による洗脳から救ってくれた、という人。日本のアニメの数々を手放し大絶賛、注釈をつけたアニメは207本。

中国で制作される歴史作品は通説をそのまま再現したものが大半で、作者独自の解釈が加えられることはほとんどない。国定教科書では歴史上の人物のイメージや事件の定義は、すべて中国共産党の思惑で統一され、著者が独自の人物イメージを付与したり、事件を解釈することは許されない。天安門事件は「反共産主義の海外勢力によるクーデター」と定義され、真実を覆い隠している。

政府にとって都合の悪い歴史的事実は隠蔽され、毛沢東が提唱した大躍進政策や文化大革命により、何千万人もの死者を出した事実など語られることはない。教科書の内容をなぞったような味気ないものばかり。学校図書館に必ずといっていいほど置かれているのが、中国プロパガンダそのものの『はだしのゲン』。テレビでは荒唐無稽な抗日ドラマが、日本に対する憎悪と嫌悪感を募らせる。

著者はある出版社の編集者から、連載が正式に決まったから中国のヤバい実話を思う存分描いて下さいといわれ、ネームを送った翌日、厳しい変更要求を受ける。リアル中国の事情を描く際に、中国政府及び中国共産党を批判する表現はすべて削除された。中国人のマナーの問題、なりすまし日本製の話も没。ポリコレは常に騒動のネタを作り出し、出版社の自主規制リストは増える一方。

この本では著者の愛する日本の数々の作品を語るとともに、その背景に流れる日本人独自の思想や精神性、そして作品内容から浮かび上がる日本の現状を著者なりの解釈で論じている……というほど硬い内容ではない。それなりのガイドブックではあるが、大の日本びいきの中国人が書いたというだけがセールスポイント。

前書きの文末にある「表現の規制が撤廃されたら、日本の作品文化はさらに高いステージに到達することを、僕は確信しました。この書籍が、わずかながらも世論が変換するきっかけになることを、僕は期待しています」とはどういう意味なんだろう。そんなに日本のアニメは表現の規制が厳しいのか。わたしは声優の声が大嫌いでほとんどアニメを見ないから、この件については分からない。

どうやら戦後の自虐的思想に影響を受けたクリエイターたちが、反日的な内容の作品を発表し続けて、日本人の思想に影響を与えているということらしい。マンガでも映画でも文芸でも、変な思想を持ち込むなといいたくなる物件は確かにある。アニメよ、おまえもか。とくに著者に共感できるのは、「貞子」と「ゴジラ」は絶対に倒せない、っての。アニメじゃないじゃん。

編集長 柴田忠男

image by: Usa-Pyon / Shutterstock.com

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