実店舗とネットショップの違いから見えてくるこれからの販売戦略

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ファッションブランドの販売・広告戦略は、ネットショップの登場によって大きく変化しています。その影響はファッション雑誌の相次ぐ廃刊やウェブ媒体化などにも表れていますが、実店舗が無価値になったわけではありません。ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、メルマガ『j-fashion journal』で、アパレルブランドにとって実店舗とネットショップの機能としての違いを解説。それを踏まえてのSNSなど外部メディアとの連携がより重要になると説いています。

実店舗とネットショップの機能の違い

1.実店舗とネットショップの違い

実店舗はかなり大きな空間です。その中に商品を陳列するわけですが、空間が大きいほど、商品のバリエーションが必要になります。ある程度の商品のボリュームも店舗の魅力につながります。一般的に、高級な店では商品はゆったりと陳列され、安売りの店は商品を限界まで並べています。それでも、あまりに商品が少なければ、寂しい印象を与えるでしょう。

ネットショップは一つの商品だけでも成立します。しかも、画像だけで受注を取ることができます。実店舗で売上を上げるには、多店舗化が必要です。多店舗化すると、店頭在庫が膨らみます。ネットショップは店頭在庫の負担がありません。

一方、実店舗は多店舗化すれば、ある程度の売上増が見込めますが、ネットショップで売上を上げる確実な方法はありません。「SEOやオンライン広告で現在の売上が2倍になります」というコンサルタントもいますが、多くの場合、現在の売上が少ないので2倍は可能でしょうが、50倍、100倍にする方法は明確になっていません。

2.ブランドイメージ訴求のための旗艦店

かつて、ラグジュアリーブランドのショップはパリの本店だけでした。同時に、アメリカ等の百貨店や専門店に輸出していました。当時は、本店はブランドイメージを具現化したものであり、百貨店の売り場は商品を販売するための売り場に過ぎなかったのです。この時点における本店と百貨店の売り場の違いは、実店舗の2つの機能を表しています。ブランドイメージ訴求と、商品訴求です。

やがて、世界の大都市に本店に劣らない豪華な店舗を展開し、グローバルビジネスになりました。ブランドイメージ訴求に実店舗は適しています。店舗に入る前から、ファサード(開口部)のデザインが顧客に期待を抱かせます。多くの店のドアは重々しく、それがブランドの持つ世界と外界を隔てる結界となります。店内に入ると、ブランドの世界観を具現化した環境の中に分け入ることになります。

そして、ショップのスタッフはブランドイメージに相応しい、容姿とスタイリングを実現しています。そこにある商品は単なる商品ではなく、ブランドイメージの具現化であり、ブランドが表現する特別なコミュニティの一員になるための身分証明書なのです。顧客を包み込み、五感でブランドイメージを訴求する機能は、WEBサイトにはありません。

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