反プーチン指導者が重体。陰謀論ではない「ロシアで何が起こったか?」

kitano20200821
 

絶大な権力を有し、ロシアの全てを支配していると言っても過言ではないプーチン大統領ですが、今月1日には各地で反政権デモが行われるなど、「ほころび」も目につくようになってきています。そんな中、反プーチン勢力の指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が意識不明の重体に陥ったというニュースが世界を駆け巡り、さまざまな憶測を呼んでいます。専門家はどう見るのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、ナワリヌイ氏がこれまで起こしてきたアクションやそれに対するプーチン大統領の反応等、事件の全体像を掴む一助となる「事実」を記しています。

反プーチン勢力指導者ナワリヌイ意識不明の重体

8月20日、反プーチン勢力の指導者、アレクセイ・ナワリヌイさんが「意識不明の重体」であることが報じられました。

ロシア反体制派指導者が重体 「毒盛られた」可能性

産経新聞 8/20(木)17:45配信

 

【モスクワ=小野田雄一】ロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏の広報担当者は20日、ナワリヌイ氏が意識不明の重体となり、病院で緊急治療を受けていると明らかにした。何者かに毒物を盛られた可能性があるという。

もう少し、具体的に。

広報担当者や露独立系メディアによると、ナワリヌイ氏は9月の露統一地方選の選挙キャンペーンのためにシベリア西部トムスクを訪問。20日朝、モスクワに戻る途中の航空機内でうなり声を上げ、倒れた。航空機は露南西部オムスクに緊急着陸し、同氏は緊急搬送された。医師は「熱い液体を通じて毒物が摂取され、中毒になった可能性がある」と診断した。ナワリヌイ氏はこの日朝、空港のカフェでお茶を飲んだという。
(同上)

この件、「ホントに毒盛られたのですか?」「あの人がやらせたのでしょうか?」など、いろいろ疑問が湧くでしょう。匿名掲示板やヤフーニュースのコメント欄なら、好きなことを書けます。

しかし、真面目なメルマガなので、「現時点ではわかりません」と言うしかありません。「証拠なし」のまま想像力を駆使して記事を書くのは、「陰謀論、トンデモ系のはじまり」です。ですが、「ナワリヌイとは何者なのか?」を語ることはできます。これを読めば、なんとなく全体像が見えてくるでしょう。

ロシア政治の特殊な事情

まず、ロシア政治の特殊な形態についてお話します。ロシア議会(下院)には、4つの主要政党があります。与党「統一ロシア」。野党「ロシア共産党」「ロシア自民党」「ロシア公正党」。つまり、与党1、野党3の割合。民主的ですね~~~。

ところが、ロシアの議会は特殊です。与党はもちろん、3野党も、決してプーチンを批判しないのです。彼らは、プーチンの下の首相や閣僚の批判ならします。しかし、プーチン批判は決してしないのです。いってみれば彼らは、「なんちゃって野党」。ロシアでは、「システム内野党」(システムナヤ・アパジ
ツィア)と呼ばれます。

では、ロシアには、リアルな「反プーチン勢力」はいないのでしょうか?います。「マジ反プーチン勢力」。ロシア風にいうと、「システム外野党」(ヴニェシステムナヤ・アパジツィヤ)。その勢力の代表的人物が、アレクセイ・ナワリヌイなのです。

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