安倍政権の7年8ヶ月から「ウソ、詭弁、隠蔽、改竄」を引くと何が残るか?

 

ダメ押しとなったコロナ対策の迷走

こうした安倍政権の特異な性格はすべてそのままコロナ事態への対応にも流れ込んで数々の失態を招き、それが政権失墜へのダメ押しとなった。菅直人政権の3・11対応を、あることないこと言い立てて馬鹿にし民主党政権時代を“悪夢”と罵るのが安倍首相の演説や答弁の決め文句だったが、私の見るところ、安倍政権のコロナ対応はそれを遥かに上回って悪夢的ではないのだろうか。

安倍首相の決め文句はただの印象操作というかデマゴギーにすぎず、それに対して民主党側からは、菅直人自身による『「原発ゼロ」の決意/元総理が語る福島原発事故の真実』(七つ森書房)、当時官房副長官として対処に当たった福山哲郎の『原発危機/官邸からの証言』(筑摩書店)、やはり内閣官房参与だった田坂広志の『官邸から見た原発事故の真実』(光文社新書)など当事者による証言や、いくつかの事故調査委員会による詳細なレポートなどが出ていて、事実に即して検証し教訓を導くことが可能である。さてコロナ禍については、一段落した後に安倍首相自身をはじめ官邸周りで働いた人々から、それぞれの立場で捉えた真実を総括して貰いたい。それが出るまでは、どちらが悪夢的かという比較は留保しておきたい。

それにしても、最初の段階のダイヤモンド・プリンセス号における対策は、政治家としては橋本岳=厚労副大臣と自見英子政務官の不倫コンビが取り仕切り、その直下には医系技官の大坪寛子官房審議官がいて、実際にはこれまた“コネクティングルーム不倫”(これ、今年の新語大賞候補ですかね)相手の和泉洋人=首相補佐官と連絡を取りながら実務をこなしていた。不倫など個人の勝手とも言えるけれども、この2組のカップルは、人々の命に関わる未曾有の危機を防ぐ最前線の指揮を任されながら公務の場をも利用して愛を確かめ合っていたもので、そのような信じがたいほどの弛緩ぶりが、当時、岩田健太郎=神戸大学病院感染症内科教授が告発したように、船内のレッドゾーンとグリーンゾーンを峻別するという最も初歩的なルールさえも徹底されずに船内のスタッフが感染していたという事態に繋がっていた。あるいは、感染なしと判定され下船を許された乗客を横浜港で放してしまい、公共交通機関で帰宅するに任せたり、帰国の途に着いたオーストラリア人が航空機内で陽性反応を示し後に死亡したり、まあ出鱈目と言っていいフォロー体制がとられていた。ここから日本の失敗はすでに約束されていたと言える。

それで焦った官邸官僚が、全国一斉休校措置、アベノマスク配布、各戸30万円でなく各人10万円一律給付など、思いつくままにあれこれの衝動的な「やってる感」演出を乱発し、もう訳がわからなくなってしまった。この辺りから安倍首相の病状悪化が始まったものと推測される。

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