弱者切り捨ての安倍長期政権は、日本の大問題からどう逃げ切ったか?

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安倍晋三首相「突然の辞任劇」から5日あまりが経過しました。マスコミなどでは早くも「ポスト安倍」にばかり注目が集まっていますが、長期政権が何を実行し、何をしてこなかったのかという「総括」も重要なことではないでしょうか。ジャーナリストでメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者である引地達也さんは、7年8カ月にも及ぶ安倍政権が真剣に向き合わなかったことについて、厳しい口調を交えながら振り返っています。

長期政権で乏しかった福祉のメッセージとその罪

安倍晋三首相が辞任を表明し、各メディアが7年8か月の歴代最長の長期政権への総括する中で、障がい者福祉やマイノリティに対する姿勢や政策への評価は大々的に行われていない。

いや、評価対象となる話題も行動もない。

つまり、この政権が真剣に課題化してこなかった、ということだろう。

ニュース映像で登場する国会以外の安倍首相を想像してほしい。災害時に被災地を視察する首相、イベントで満面の笑みでスピーチする首相、外交舞台で国家元首と会談する首相、大企業の工場で生産現場を訪れる首相。そんな背景が思い浮かぶ。

しかしながら、福祉施設での安倍首相の姿は私の記憶にはない。

障がい者と触れ合ったり同じフレームに収まっているような印象はない。

首相自身の口から福祉行政や障害者に関する「ことば」がリアルに伝わってきたこともない。

この長期政権で福祉行政のリーダーのメッセージというエンジンは発せられず、「飛躍できなかった時代」ともいえるかもしれない。

日本の福祉政策は障害者に関する社会的認知度は停滞したまま、障害者が地域で生きやすい状態に向けては発展途上にある中で、安倍政権は福祉政策の「進展の可能性」に非常に重要な時期と重なっている。

第一次安倍政権時の2006年に施行された障害者自立支援法は名称通り「自立」に重きを置き、「自分らしく生きる」という本来誰でも持つ権利から離れた考え方に反発があった。

自立の象徴として福祉サービスの自己負担を導入し、その結果、福祉サービスで就労した工賃よりも利用者が支払うサービス料が多いなどの問題点が指摘され、12年に部分改正を行い、改称されたのが障害者総合支援法であった。

これが第二次安倍政権時代である。

障害者が一般企業に就労させることを奨励し、企業の法定雇用率を上げ、福祉サービスの就労移行支援や就労後の定着支援も整備し、障害者をタックスペーヤーにするべく策が講じられているが、このようなミクロの動きは、経済優先のベクトル中で描かれた制度の上に乗った策であり、そこにリーダーのメッセージはなかった。

おそらく首相に関心がないのだろう。

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