アパレルは死を待つのみ?「異性の目」を気にしない世界で服を売るには

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コロナ禍により外出して人に会う機会が減ったことで一気に落ち込んだファッション需要。店舗への来客も減り、これまでの販売戦略では、生き残ることが難しくなっています。メルマガ『j-fashion journal』著者でファッションビジネルコンサルタントの坂口昌章さんは、冷静な現状分析から、行き詰まってしまったアパレル小売業が生き残るためには、根本的に価値観を変えなければならないと、7つのポイントを上げて可能性を示しています。

新ノーマル市場への対応

1.後戻りはできないが動けない企業

自粛中、店を閉めていた小売企業は売上、利益が上がらず、賃料、人件費等の経費は出ていた。その期間に販売するはずだった商品が在庫として残っている。在庫を処理しない限り、次の商品は仕入れられないし、赤字を解消するには、例年以上の売上が必要になる。

ということで、多くの小売企業は手詰まりだ。できることは不採算店、不採算部門を閉鎖し、社員を解雇することだけだ。処分できるものは処分した後、次に何をすればいいのだろうか。その準備をしておかなければ、危機を脱したとしても、将来は見えてこない。

こうした切迫した状況にも関わらず、経営者、社員共に、これまでのルーティンを繰り返すだけで、新しいことに手をつけない。考えてみれば、20年以上、安売り商法だけを行ってきた。多くの人は、新しいプロジェクトを企画し、運営するという経験をしたことがない。従って、考えることもできないし、企画することもできない。

ということで、バブル時代に新プロジェクトをいくつも手がけてきた世代の一人として、時代変化の分析と新プロジェクトのコンセプトについて提案したいと思う。

2.インドア、ローカルの生活シーン

新ノーマル市場とは何か。コロナ以前の変化がコロナと共に加速した市場と言えるかもしれない。第1に、「インドアを中心にした生活」だ。これまでも巣籠もり、コクーンと呼ばれる消費スタイルは存在したが、それが「テレワーク」で一気に主流になった。

テレワークは会社の立地や規模を変え、周辺のコンビニや飲食店、居酒屋の消費を減少させた。その分、住宅の中で仕事をするスペースが必要になり、家の中で飲食する機会が増えた。外食するなら、全国から美味しい食材をお取り寄せすることを選ぶ。

会社に通勤するから、通勤着が必要だったが、それが不要になった。また、会社内での同性や異性の目を気にしなくても良くなったので、ファッションやヘアメイクで見栄を張る必要もなくなった。常にマスクをしているので、化粧をする必要もない。スキンケアだけで十分だ。但し、マスクをしてもアイメイクは必要だろう。

このように、これまでは家の外、会社の中のシーンを設定していた商品を全て、インドアに置き換える必要がある。アパレルなら、インドアのくつろぎ着が中心になるし、靴なら室内履きが重要になる。あるいは、家から近所のコンビニ程度まで歩くことを設定した気楽な服や靴である。つまり、衣食住の全てで消費スタイルが変わるということだ。

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