アパレルは死を待つのみ?「異性の目」を気にしない世界で服を売るには

 

第4に、「トレンドよりアイデンティティ」をあげたい。これは、前述した都会から地方への動きとも連動している。グローバルトレンドよりも、地方のアイデンティティ、個人のアイデンティティを重要視したブランドが出現するのではないか。

そもそもトレンド情報の意味とは、シーズン毎に新しいテーマを打ち出すことで、過去の商品を陳腐化し、新たな商品を販売するという意味がある。オートクチュールの起源は貴族のパーティードレスであり、毎回新しいドレスを作るニーズがあった。そこで、シーズン毎に新しいテーマで半年分のコレクションを発表したのである。

その流れで富裕層を対象にしたオートクチュール、プレタポルテのコレクションへと変化した。ライセンスビジネスも拡大し、ブランドイメージを維持するためにも、常に変化を続けることがミッションとなったのである。

それが大衆ファッション、ファストファッションにも波及した。富裕層向けのコレクションのトレンドをアレンジし、大量生産、大量販売したのだ。大衆向けの服がトレンド変化を続けることは、使い捨てを促し、廃棄を増やすことにつながる。

大衆にファッションは必要なのか。むしろ、個人のアイデンティティに合わせ、機能的で合理的なロングセラーのワードローブを提供することの方が価値があるのではないか。

4.陳腐化しないロングセラー商品

第5に「デジタルな変化よりアナログな改善」、第6に「視覚訴求より素材訴求」をあげたい。この2つのテーマは、ロングセラー商品を作るという意味で共通している。これまでは、店頭起点で店頭の変化を収集し、売れるモノを供給してきた。しかし、コロナ禍で自粛した結果、次々と変化しながら使い捨てていくビジネスは成立しなくなっている。1シーズンだけの商品ではなく、何年も売り続けるという気持ちでモノ作りをしなければならない。

形の変化を追いかけるのではなく、素材や仕様の改善を続けていく。デザインの差別化ではなく、品質の差別化、サービスの差別化を行う。一度購入したら、リピーターになりたくなる商品が求められている。

流通チャネルも変化している。店頭販売からネット販売である。店頭販売では、店舗というある程度の空間を商品で埋めることが求められている。そこで、デザインのバリエーション、カラーのバリエーションが必要になる。店舗は視覚で勝負している。従って、VMDが重要なのだ。

ネット販売では、視覚よりも、テキスト情報が重要になる。検索するのはテキストが基本だ。商品企画は、テーマ、ストーリー、素材、仕様が重要になる。それぞれの要素をいかにこだわっているか。そして、クラウドファンディングのように、企画の途中段階から消費者を巻き込みながら、企画を詰めていくという手法も有効だろう。

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