アパレルは死を待つのみ?「異性の目」を気にしない世界で服を売るには

 

第2に、「密な都心から疎な地方へ」と市場が変化する。これは、グローバルからローカルへという流れにも呼応している。大都市はグローバルな生活スタイルが中心だ。東京、ニューヨーク、パリ、ロンドン、シンガポール、上海等は、ほぼ同じブランドショップが並び、世界各国の料理が楽しめる。

都会は密な空間である。密な空間はエキサイティングで楽しい。しかし、コロナ禍によって、密が禁止され、疎を再発見することになった。地方の疎な空間は、ウイルス感染のリスクも低く、独自の文化、アイデンティティを持っている。

大都市のグローバルな人間は、共通の資本主義経済、自由主義経済、貨幣経済を基本とした最先端の競争社会に生きている。地方には歴史と文化がある。それぞれの地域に根ざした価値観、美意識がある。伝統工芸や地場産業があり、独自の生活スタイル、衣食住がある。

これまでの商品企画は、主に大都市を中心としたグローバルスタイルだった。それをローカルスタイルに変えることが求められる。例えば、東京のブランドよりも、秋田や青森のブランドを発表した方がインパクトがある。また、自治体や大学、地場産業の企業等とのコラボレーションも組み易いだろう。あえて、地方発のブランドを作り、それを世界に発信し、独自のファンを増やしていく。全国一律のビジネスから、地方の独自性を発信するビジネスへの転換である。

3.脱トレンド、脱大量生産

グローバル経済の象徴が中国製品だった。中国は「世界の工場」であり、世界の市場に向けた商品を生産している。日本市場の中でも、中国製品の占めるシェアは圧倒的だ。日本企業が中国生産を始めた理由は大量生産を維持するためだった。その前提は、安い商品を使い捨てるという消費スタイルである。

しかし、環境問題、エネルギー問題への関心が高まり、安い商品を使い捨てるという生活スタイルは否定されるようになった。コロナ禍では、家にいる時間が増えた結果、「断捨離」に励む人が増えた。無駄なモノを整理して、モノを減らすことで、精神的にも余裕が生れる。モノを買い、モノに囲まれた暮らしはストレスにもつながるのだ。

断捨離をした人が、安物を使い捨てる暮らしを続けるとは考えづらい。一つのモノを長期間、大切に使いたいと思うはずだ。そうなると、中国製品を使う必要はない。同じように支出するならば、多少価格は高くても、日本製品を大切に使うことで、日本社会も日本経済に貢献したいと考える生活者も少なくないだろう。

また、中国製品の比率を減らし、日本製品の比率を高めることは、次のウイルス感染等で貿易が止まった場合の安全保障にもつながる。「大量生産の中国製品から、少量生産の日本製品へ」。それが第3のテーマである。

print
いま読まれてます

  • アパレルは死を待つのみ?「異性の目」を気にしない世界で服を売るには
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け