やっぱり「タバコで重症化」新型コロナのリスク因子を医師が警告

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新型コロナウイルスに感染して恐ろしいのは重症化すること。高齢者と呼吸器系疾患のある人たちが重症化しやすいのは確かなようですが、無症状や軽症で済む場合の要因について確かなことはわかっていません。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』著者で群星沖縄臨床研修センターのセンター長である医師の徳田安春先生は、パンデミック初期にあった「喫煙者は重症化しにくい」という報告を改めて検証。タバコが呼吸器系統にダメージを与え免疫力を低下させるメカニズムを解説するとともに、報告の元となったデータにあった「落とし穴」を指摘しています。

新型コロナとタバコ。肺や気管支に対する影響は?

タバコを吸わない人に比べて、タバコを吸う人は新型コロナにかかると重症化しやすいのか、今回はこれについて論じる。新型コロナのパンデミック初期の頃のデータに、タバコを吸う人は新型コロナに感染しても重症化しにくいなどの報告が一部からあったからだ。本当にそうなのかについて検証する。

まず、タバコによる肺や気管支に対する影響について見ていく。タバコで吸入される物質には強い毒性があり、呼吸器組織に炎症を起こしダメージを与え、破壊していく。長期間タバコを吸っていると肺の最も奥にある肺胞と呼ばれる構造が破壊され、肺気腫になる。気管支に炎症が起こって、痰がたまりやすくなると慢性気管支炎である。これは、慢性閉塞性肺疾患と呼ばれており、この病気によって在宅酸素療法を余儀なくされる人が後を絶たない。

また、タバコは免疫力を低下させる。呼吸器組織のあらゆる場所に、ウイルスや細菌と戦う免疫細胞がいるが、タバコ毒によってこれらの細胞が死滅し、ウイルスや細菌の感染にかかりやすくなる。タバコを吸っている人が、風邪やインフルエンザにかかりやすいことはよく知られている。タバコに含まれる発癌物質によって肺の細胞のDNAが傷つき、肺癌になりやすくなる。免疫細胞が少ない喫煙者では癌細胞が排除されにくくなり、癌が進行していく。

大気汚染と有機フッ素化合物

タバコと並んで肺や気管支に毒性が強いのは大気汚染物質である。タバコを吸わない人で慢性気管支炎や肺気腫を発症している患者さんを診察する場合、長年にわたって大気汚染への曝露(化学物質や物理的刺激などに生体がさらされること)がなかったかどうかを確認している。都市部で、交通量の多い道路沿いに住んでいる人々や、日ごろからオートバイに乗っていると大気汚染物質の曝露が多くなる。世界の疫学データで居住地に注目すると、都市部の方が田園地域より新型コロナ感染の重症化のリスクが高いことがわかっており、その最も重大な要因は大気汚染による曝露だと考えられている。

環境中にある物質で、新型コロナ感染症の重症化リスクの1つだろうと注目されているものに有機フッ素化合物がある。英語の略語でPFASと言われ、正式にはパーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物を指す。耐火性があるので、飛行場などで大量に使用されているフッ素化合物である。

この化合物PFASは、一旦体内に入ると、分解や排泄されることなく体の中に蓄積していくので永遠の化学物質、英語ではフォーエバー・ケミカル、とも呼ばれている。数年前より、動物実験でこのケミカルの毒性が強く示されており、肝臓や腎臓の障害のほか、免疫細胞にもダメージを与え、免疫力を低下させることがわかっている。

最近、沖縄にある米軍基地内から基地の外にある住宅地にPFASが漏れる事故があった。新型コロナ感染が市中流行していて、県民が外出自粛をしている最中に起きた事故だ。その後には、基地内で大型クラスター感染を起こし、県民に二次感染者も発生させた。米軍基地のずさんな感染管理と環境への配慮の乏しさが、沖縄県民の感染リスクとその重症化を増大させたのかもしれない。

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