タバコは重症化のリスク因子である
以上、タバコによる呼吸器や免疫の細胞に対する悪影響や、タバコに似たようなもので呼吸器や免疫にダメージを与える大気汚染や有機フッ素化合物についてみてきた。それでは、新型コロナ感染の重症化についてはどうなのか。この論争に決着をつけたのは、今年の5月までのデータを統合するメタ分析論文であった。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のグランツ博士らがメタ分析を行ない、結論としてタバコは重症化のリスクであることが判明した。初期のデータの中にタバコがリスクではないとされていた研究内容を調べると、患者さんの喫煙歴についてきちんと問診をしていなかったことがわかったのだ。
医療従事者の問診でも間違えることがある。患者さんに対して「あなたはタバコを吸ってますか」と聞くと、肺炎にかかった人は、その肺炎症状が出てからタバコを止めたにもかかわらず「タバコは吸ってません」と答えることがある。適切な問診は「生まれてからこれまでタバコを吸ったことがありますか。あるのでしたら、その期間と一日に吸う本数を教えてください」と聞けばよいのだ。研究データの裏に隠れている落とし穴を見抜くことも大切である。
タバコを吸っている人はまだまだ大丈夫である。タバコを今止めれば、1ヵ月後は免疫も肺も良くなることがわかっている。医療機関の禁煙外来を利用すると成功率も高まる。動機づけ面接などをやってくれる医師の禁煙外来を受診するとさらに成功率は高くなるだろう。しばらくは続くと考えられるコロナ禍の中で、できるだけ重症化のリスクを減らすことは大切だ。
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