新型コロナを「武漢ウイルス」と呼ぶ自称愛国者が日本の恥である理由

 

中国に対しても、主張すべきことは率直に伝え、問題解決を図りながら、同時に政治的、経済的、文化的な面で日本の国益に沿った戦略的な関わりを深め、経済面を中心に相互依存関係を築いていく。そういう中で敵意が生じにくい環境が醸成されていくのは間違いありません。

中国に「騙されるのではないか」などとたわ言をいう勿れ。戦略的に関わることでそうした事態は少なくなりますし、だいたい、騙されないと思うほうがおかしいというのが国際関係です。

そのように敵意が生じにくい環境を拡大深化させる一方、防衛力整備と日米同盟の深化を進め、中国に差を縮められないようにする。できれば差を広げるように努力するのです。

どうですか。中国を脅威にしない取り組みがおわかりだと思います。これが一流の国の戦略的思考というものです。同時に、安全保障の世界に「安心してよい」という言葉は存在せず、常に注意を怠らず、必要な措置を講じていくことも、日本が一流国であろうとすれば、心得ているはずだと思い起こしていただきたい。尖閣周辺での領海侵犯など、日本が独立国なら備えておくべき領海法などを整備してこなかった結果なのです。

WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が中国寄りだから、「武漢ウイルス」と呼ばないのではありません。発生地の名前をかぶせることで、その国を非難・攻撃するときにネガティブに使われることを避けようと、かつてのスペイン風邪などの教訓に学んだ結果なのです。かりにWHOのトップが反中国派であっても、現在のCOVID-19のような符号による呼び方になることは言うまでもありません。

このコラムを書いたことで、また10人ほど友人知己を失ったかもしれません(笑)。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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