散々な米大統領選第1回テレビ討論会。アメリカ国民が敗者になった日

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日本時間の9月30日午前、アメリカ大統領選挙の候補者2人による第1回の討論会が実施されました。過去には情勢逆転が起こったこともある重要な討論の場ですが、今回は異例の事態となったようです。元国連紛争調停官で国際交渉人の島田久仁彦さんが、メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』の号外を配信し、この討論会の様子を伝えてくれました。マスメディアが伝える非難の応酬の場面だけでなく、両候補の主張にもスポットを当てた上で、それでも尚且「何一つ得るものがなかった」と断じています。

アメリカ大統領選挙第1回討論会を斬る

2020年9月29日午後8時から(日本時間は30日午前10時から)トランプ大統領とバイデン元副大統領との第1回討論会が実施された。コロナの影響もあり、2人の間には十分すぎるほどの距離が置かれていたが、ディベートそのものの話も、2人の物理的な距離以上に隔たりがあったように思う。

まず、今回の討論を評するならば【何一つ得るものがなかった】といえるだろう。互いの発言も、支離滅裂で、何一つ具体的な要素がなく、非難の応酬と、発言を頻繁に遮るルール違反ゆえ、時には発言内容が聞き取れないこともあった。モデレーターのクリス氏も完全にコントロール不能な状況に陥った様子で、残念ながら秩序あるモデレーションとは評価できなかった。

トランプ大統領については、良くも悪くも相変わらずの存在感で、皮肉っぽく言えば、バイデン氏に言いたいことを言わせないテクニックを駆使していた。ただ、ちょっとやり過ぎ感も否めない。これまで何度か“第1回討論”を観ることがあったが、初めからオバーヒート気味なテンションでまくし立てるような討論は見たことがない。

通常は、お互い自らの主張・考えを“静かに”述べて場をセッティングし、討論を通じて少しずつヒートアップしていくのだが、今回は、モデレーターが掲げた質問に答えているようで答えず、代わりに批判の応酬と、自らの主張のディフェンドに徹していた気がする。

また、よく使用される数字やデータもfact checkにかけてみたら、誇張の連発。Tremendous(膨大な)という表現を多用して、非常に効果があったように表現していたが、具体的な数値の提示がなく、あったかと思えばmillionsというような曖昧なものか、すでに述べた偽りの、誇張された数値が目立った。

ヘルスケア、COVID-19、地球温暖化、経済対策といった今回のネタに対しても、あまり具体的な話はできなかったとの印象で、何一つ具体的な内容が記憶に残らない感じがした。

ただ、ショッキングだったのは、Law and Orderの話題の際、モデレーターから『白人至上主義を止めさせるような発言はできるか?』と尋ねられた際に、Yesというのではなく、Stay Back and Stay Tunedと発言し、白人至上主義を助長するような回答で終わったことだろう。

発言の意味するところはいろいろな解釈も可能かもしれないが、実際にその発言後に、白人至上主義を信奉するグループからは称賛の声が上がったところを見ると、あながち解釈も間違っていない気がした。今回、トランプ大統領の支持率に対して大きな失点になりかねない内容は、目立ってはこのネタだろう(国民はどう反応するだろうか)。

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