金正恩の謝罪は「お米ください」のサイン。北の食糧危機は最終局面か?

 

朝鮮語で謝罪を意味する語句としては「サジェハムニダ(謝罪します)」、「サグァハムニダ(謝過します)」、「チェソンハムニダ(罪悚します)」などがあるが、これらの前に「テダニ(大端に、大変に)をつけ加えれば、立派な謝罪とはなるのだが、「ミアナムニダ」は謝罪を意味する言葉としては一番低い。本当に謝罪するのであればせめて「サジェハムニダ」か「サグァハムニダ」くらいは使ってもよさそうなものだが(ちなみに、小泉首相と金正日総書記との拉致問題の解決の会談では、金正日が「サグァハムニダ」と言ったと聞いている)。

北朝鮮側は、これまで文在寅大統領や韓国政府に対して罵詈讒謗の限りを尽くしてきたが、自らの非を認めて相手側に謝罪するときは、極めて差しさわりない言葉で対処しているようだ。このような謝罪の文書を「言うことを聞かなければ『南北共同連絡事務所』を爆破する」と言い放った厚顔の金与正女史が言うだろうか。

北朝鮮側にとって幸いなことは、大多数の韓国民とは異なり韓国政府と文在寅大統領が金正恩の謝罪声明を肯定的に受け止めていることだ。

韓国の情報機関「国家情報院」は、「射殺は金正恩委員長の指示ではない」と判断しており、国防部が事件現場の北朝鮮海軍の警備艇長が、「射殺しろですって?本当ですか?」と、上部に聞き返している交信を傍受しながらも、「射殺」の表現はなかったと釈明しているとのこと。事ここにいたり万事休す。

北朝鮮のマスコミも韓国側のこのような予想外の好対応を見越してか、今回のこの事件を「芳しくない事件」と表現し、韓国人男性を非情極まりない方法で殺害したことや、金正恩が韓国側に謝罪したことには言及していない。

当然のことだが、北朝鮮の労働党機関紙『労働新聞』を始めとするすべてのマスコミは、金王朝の御用機関であるから「偉大な指導者同志が南側に謝罪した」などとは報じることがない(できない)のも当たり前だが。

金正恩は9月29日に開かれた朝鮮労働党政治局会議に出席し、会議では新型コロナウイルスの感染防止策を討議したが、黄海での韓国人射殺には触れていないという。水害地域に乗用車で駆けつけたり、たばこをくわえながら意味不明の現地指導なることを行っているこの指導者に「謝罪する」ということはない。

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