菅首相の6人任命拒否で暴かれた、安倍前首相が犯していた憲法違反

 

そうしてくれていたら、どんなに良かったか…とは思いますが、もしも天皇がそんなことをしたら、日本は民主主義国家ではなくなってしまいますし、象徴天皇による国政への介入は憲法第4条に違反します。しかし、これと同じことを菅首相はやってしまったのです。これは「憲法違反」というだけでなく、歴代の自民党政権の政府見解にも反しています。日本学術会議の会員の選出が選挙制から推薦制に変わった1983年、当時の中曽根康弘首相は5月12日の参議院の文教委員会で、次のように答弁しています。

「(学術会議の会員の選出は)学会や学術集団などの推薦に基づいて行われるので、政府が行なうのは形式的任命に過ぎません。実態は各学会や学術集団が推薦権を握っており、政府の任命はあくまでも形式なものです。そのため、学問の自由独立は保障されているものと考えております」

また、当時の中曽根内閣の丹羽兵助総務長官も「学会から推薦したいただいた者は拒否しません」と断言しています。

とても分かりやすい説明ですよね。いくら政府に任命権があると言っても、学会側から推薦された候補者を黙ってそのまま任命するだけの「形式的な任命権」なので、学問の自由独立は保障されており、学問への「政治介入」という憲法違反は起こらないという説明です。そして、この中曽根首相の認識は、2004年に現在の「日本学術会議による推薦」という形に変わってからも、ずっと踏襲されて来ました。それは、この認識が変わり「形式的な任命権」でなくなってしまうと、憲法違反になってしまうからです。

ルール違反好き。トンデモ元総理・安倍晋三氏の罪

しかし、長く続いて来た法律の解釈を、自分に都合よく勝手に書き変えてしまうトンデモ総理が現われたのです。そう、安倍晋三氏です。法律を変えたいのであれば、その法律に関する改正法案を提出して、国会で審議するのが筋です。たとえ自公プラス維新という数の暴力による強行採決でも、こうした手続きを踏めば、その法改正は民主主義の結果ということになります。でも、何の手続きも踏まずに、その法律の条文の解釈を自分勝手に変更することで、それまでとは別の法律にしてしまう。これは卑怯で卑劣、民主主義を根底から否定する反則です。

しかし、安倍晋三氏という人物は、皆さんご存知のように、ルール違反が大好きです。その最たるものが、2014年7月1日に閣議決定した「集団的自衛権の行使容認のための憲法の解釈変更」、つまり「解釈改憲」です。たとえば、白かったものを薄い灰色に変えるくらいなら「解釈変更」で済む場合もあります。しかし、地球の裏側の国まで武装した自衛隊を出動させて他国の戦争に参戦することを「自衛の範囲」とする「解釈変更」などありえません。これは、真っ白だったものを真っ黒に塗り替える内容変更ですから、「解釈改憲」ではなく、正式に「憲法改正」の手続きを踏まなくてはなりません。

このように安倍晋三氏を暴走させた原因は、本日二度目の登場ですが、これも中曽根康弘元首相なのです。中曽根元首相は、小泉政権下の2004年11月11日の衆議院憲法調査会の公聴会で、次のように述べています。

「集団的自衛権は憲法解釈の問題なのだから、現憲法においても総理大臣が公式に言明すれば行使できるようになる。一時的には一部の国民が騒ぐだろうが、そのまま強引に推し進めれば通用するようになって行く」

そして、この1年後の第3次小泉改造内閣で、安倍晋三氏は内閣官房長官として初入閣を果たし、その翌年、第1次安倍政権が誕生したのです。安倍晋三氏は、この時から中曽根元首相の述べた「解釈改憲」を虎視眈々と狙っていたのです。他にも、最近で言えば、今年2月の黒川弘務騒動があります。安倍晋三氏は自分の息の掛かった東京高検の黒川弘務検事長(当時)を検事総長にするため、それまではできなかった定年延長を可能にする法律の解釈変更を行なったのです。それも、水面下でコッソリと。

行政府の長である総理大臣が、このように自分勝手に法律の解釈を変更する行為は、立法府の立法権に対する不当な侵害であり、完全な越権行為です。しかし、安倍晋三氏は、これまで何度も国会で「私は立法府の長ですから」などとトンチンカンな発言を繰り返して来ました。つまり「三権分立」を理解していないのです。そんな人物ですから、今回、問題になっている菅首相による日本学術会議の候補者6人の任命除外より一足先に、同じことをしていました。

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