菅首相の6人任命拒否で暴かれた、安倍前首相が犯していた憲法違反

km20201007
 

日を追うごとに批判の声が強まり、今秋の国会で野党が追及の構えを見せている、菅首相による日本学術会議の推薦候補6人の任命拒否を巡る問題。学問への政治介入とも言える重大な事案ですが、その種は安倍政権時代に蒔かれていたようです。今回のメルマガ『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、2016年に安倍前首相が同会議の欠員補充候補3名の推薦を拒否していた事実を紹介するとともに、その「首謀者」が当時の菅義偉官房長官だった可能性にも言及。さらに、今回の任命拒否に関して菅首相が強行突破を目論めば、内閣が吹き飛ぶほどの大問題になるとも記しています。

三権分立を無視して暴走する菅義偉

先週の9月30日(水)は第5水曜日で通常版のメルマガは休刊だったので、通常版は前回の第88号から2週間のインターバルが開いてしまいました。

そのため、世の中では、テニスの大坂なおみ選手とジャーナリストの伊藤詩織さんが米タイム誌の「世界で最も影響力ある100人」に選ばれたり、トランプ大統領夫妻が新型コロナ感染しりと、いつも以上にいろいろな出来事がありました。その中でも、第一報であたしが最も驚いたのが、10月1日に日本共産党の「しんぶん赤旗」がスクープ報道した「日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人を菅義偉首相が除外していた」という耳を疑うようなニュースでした。

すでに報道で何度も聞かされていると思いますが、日本学術会議とは「原子力三原則」などの科学に関する重要事項を審議するための科学者の組織で、政府への提言も重要な仕事です。210人の会員は非常勤の国家公務員という立場になり、会員の任期は6年で、半数の105人を3年ごとに入れ替えるという、参議院議員と同じ方式です。また、定年の規定が70歳なので、定年を迎える会員がいる場合は、その前に補充の人事を行ないます。

日本学術会議は、内閣総理大臣の管轄で国費で運営されていますが、憲法23条の「学問の自由」によって保障された「政府の影響を受けない独立した組織」です。そのため、会員の任命権者は総理大臣ですが、これはあくまでも形式的なもので、総理大臣は会議が推薦した会員候補105人を黙って承認することしかできません。しかし、菅首相は、この「形式的な任命権」というルールを無視して、自分にとって都合の悪い候補者6人を排除したのです。

6人が6人とも安倍政権下の悪法を批判して来た学者

個々の紹介は長くなってしまうので割愛させていただきますが、菅首相が除外した6人は、「特定秘密保護法」や「共謀罪」や集団的自衛権の行使を可能にした「安全保障関連法」など、これまでの安倍政権が強行して来た「アメリカの子分として戦争に参加するための悪法」に強く反対している学者たちです。百歩ゆずって、何の関連もない6人が除外されたのであれば、それは「政治介入」とは言えないかもしれません。しかし、6人が6人とも安倍政権下の悪法を批判して来た学者なのです。時の首相が自分の政権にとって都合の悪い学者を排除したという、これは上下左右どこからどう見ても、憲法違反の「政治介入」です。

この「形式的な任命権」の分かりやすい例を挙げると、総理大臣の任命も同じなのです。

現在の菅首相の場合なら、まず初めに自民党内で総裁選が行なわれて総裁に選ばれましたが、まだ「自民党の代表」というだけで、総理大臣ではありません。次に、9月16日に首班指名選挙が行なわれ、自民党の菅義偉総裁が314票、立憲民主党の枝野幸男代表が134票、日本維新の会の片山虎之助共同代表が11票、希望の党の中山成彬代表が2票、自民党の小泉進次郎議員が1票という投票結果で、菅総裁が総理大臣に指名されました。しかし、まだ「国会の代表」というだけで、総理大臣ではありません。

この後、憲法第6条に基づき、任命権を持つ天皇より総理大臣を任命されて、これでようやく菅総裁は日本の総理大臣になれたのです。これも「形式的な任命権」ですから、天皇は「NO」と言うことはできません。どんなに気に入らない相手でも、首班指名選挙によって選出された人物は任命するしかないのです。今回、菅首相がやったことは、首班指名選挙によって選出された安倍晋三に対して、天皇が「こいつは日本にとって百害あって一利なし」と判断して総理大臣の任命を拒否する、ということと同じなのです。

print
いま読まれてます

  • 菅首相の6人任命拒否で暴かれた、安倍前首相が犯していた憲法違反
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け