菅首相の6人任命拒否で暴かれた、安倍前首相が犯していた憲法違反

 

日本学術会議は2016年、複数の会員が70歳の定年を迎えるため、その補充の候補者の一覧を首相官邸に提示しました。こうした欠員の補充も、3年ごとの半数105人の会員の入れ替えと同じく、総理大臣は黙って任命するしかありません。しかし、当時の首相である安倍晋三氏は、この候補者の中から、自身が強行した安全保障関連法に反対する学者3人を名指しして、別の学者と差し替えるようにと注文を付けたのです。1983年の中曽根発言から30年以上、歴代の首相全員が守り続けて来た「学問の独立性」、憲法が保障する「学問の自由」を、安倍晋三氏はいとも簡単に踏みにじったのです。

当然のことながら、日本学術会議は候補者の差し替えなどには応じませんでした。しかし、それでも安倍晋三氏は自分の気に入らない3人を任命しなかったため、日本学術会議は3人の欠員が出た状態での運営を余儀なくされてしまいました。この問題は、当時は表に出ず、今回のことで調査を進める中で、初めて明らかになったのです。今回、菅首相が6人を除外した件について、加藤勝信官房長官は「現在の制度になった2004年度以降、推薦候補が任命されなかったのは初めて」などと説明しましたが、これは大嘘で、実際には4年前に安倍晋三氏が一足先にやっていたのです。

加藤勝信官房長官がついた「大ウソ」

安倍晋三氏は、2018年にも、この日本学術会議の会員の任命権の解釈について「任命は拒否できるということでいいか」と内閣法制局に問い合わせをしていたことも分かりました。今回、総理大臣の任命権の解釈について、加藤官房長官は「2018年に内閣法制局が明確化した」と説明しましたが、どのように明確化したのかについては明らかにしませんでした。しかし、それを理由に今回の件を「問題なし」と強弁しているのですから、この時に内閣府と内閣法制局だけでコッソリと「形式的な任命権」から「実効力のある任命権」へと解釈変更した可能性が高いのです。

しかし、もしもそうであれば、これこそが三権分立を無視した越権行為です。法律を決めるのは立法府ですから、行政府が秘密裏にこんなことをして良いわけがありません。それも、これまで「できなかった」ものを「できる」ことにするという生反対の内容への変更なのですから、通常は国会での審議が必要です。審議もせず、国民への説明もなく、秘密裏に法解釈を変更し、自分に都合の良いように法律をねじ曲げる。安倍晋三氏の十八番です。

でも、この「2018年に内閣法制局が明確化した」ので「問題なし」という加藤官房長官の無理筋な説明をすべて受け入れるとしても、2016年に安倍晋三氏が欠員補充のための候補者のうち3人を排除したのは完全に憲法違反ですから、野党はこの点も個別案件として、国会で安倍晋三氏本人を厳しく追及してほしいですね。

そんな安倍晋三氏は、今年9月16日に病気を理由に首相を辞任しましたが、その2週間前の9月2日にも、内閣法制局に2018年の時と同じ問い合わせをしていたことが分かりました。この時、内閣法制局は「2018年から変更はない」と回答したそうですが、このタイミングで確認をしたということは、自分が辞任した直後の日本学術会議の会員の入れ替えを視野に入れてのことでしょう。こうした流れを見て来ると、日本学術会議が推薦する候補者の一覧から政権に批判的な学者を排除するように、安倍晋三氏が後継者の菅義偉に指示をしたように思えて来ます。

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