日本経済のコロナ克服がV字でもK字でもなく「k字回復」になるワケ

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新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、大きな影響を受けたとされる日本経済。最近では回復傾向が見られるとの声も聞かれるようになりましたが、それは本当なのでしょうか?エコノミストとして40年の経験をもつ斎藤満さんは、自身のメルマガ『マンさんの経済あらかると』の中で景気のV字回復は難しいと指摘。その理由を日本経済が持つ3つの特色から解説しています。

コロナ禍からの回復、3つの特色

コロナ禍で急落した日本経済も、足元では多くの回復指標が見られます。そのなかに少なくとも3つの特色がみられます。1つ目は回復テンポが速い一方で水準がまだ低く、回復感が乏しいこと。2つ目に回復に明暗が分かれますが、「暗」に比べて「明」が少ないこと、3つ目に雇用面での回復が遅く、消費マインドを圧迫していることです。

特色①「方向と水準のギャップ」

日本経済は昨年10月の消費税引き上げによって大きく落ち込み、その傷がいえる間もなく、今度は新型コロナの感染拡大、各種自粛行動によってさらに大きく落ち込みました。それだけに、経済再開や政府の「Go To」など各種キャンペーンによって「急回復」を示す指標が少なくありません。

例えば、鉱工業生産は3月から5月にかけて急落した後、8月までの3か月で12.7%も増加を見せました。これだけ見ると、あたかも「V字回復」です。しかし、8月の水準はコロナ前の今年2月に比べて10.9%、前年同月に比べると13.3%下回っています。方向としては急回復に見えますが、水準的にはまだまだ低水準にとどまっています。

家計消費もコロナ禍の3月から5月にかけて10%以上落ち込みましたが、6月には10万円の特別給付金支給もあって前月比13%増と、これまた「V字回復」をみせました。ところが、7月にはまた6.5%減少し、結局コロナ前の2月より5%、1年前に比べると7.6%低い水準にあり、消費者のマインドは冷え込んだままです。

特色②「明暗のうち明が少ない」

2つ目は、コロナ禍の明暗が大きく分かれたのですが、「明」組より「暗」組が多いことです。新型コロナの感染拡大で、働き方も含めて人々の行動が大きく変わり、外出を控える巣籠型消費が増える一方、接客業では営業自粛も求められ、大きな打撃を受けました。この明暗の状況を日銀短観などでみると、大幅悪化した業種が多い一方で、潤った「明」の業種が少ないことがわかりました。

例えば、日銀短観(9月調査)の大企業での業況判断DI(「良い」とする企業割合から「悪い」とする企業の割合を引いたもの)を見てみます。

まず「明」とみられる業種は、情報サービスがプラス22、通信が21、建設21、小売り18など、主に非製造の「巣籠向き」のサービス提供業種です。製造業の中では食品製造がマイナス2と、比較的堅調な部類に入りました。

一方、マイナス幅が大きく「暗」に分類される業種としては、宿泊飲食サービス(マイナス87)、対個人サービス(マイナス65)、自動車(マイナス61)、木材木製品(マイナス59)、鉄鋼(マイナス55)、生産用機械(マイナス43)などとなっています。こちらは接客型サービス業と製造業の多くが入っています。

このように、非製造業では在宅で利用できる通信関連サービスや、生活に必要な物資の買い入れに使うスーパーやファーマなどの小売が比較的良好な反面、外出自粛やインバウンドの消滅などの影響を受けた宿泊、飲食、対個人サービスなどが厳しく、大きく明暗が分かれました。

そして製造業では食品製造、衛生用品関連を除くと、自動車関連を中心に多くの業種が苦戦を余儀なくされています。

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