日本経済のコロナ克服がV字でもK字でもなく「k字回復」になるワケ
特色③「雇用の回復に遅れ」
そして3つ目は、生産や消費と異なり、雇用の回復が遅れていることです。雇用関連指標を見る限り、急悪化の後急回復を見せる米国と異なり、引き続き悪化方向にあります。
8月の完全失業率は3.0%と米国に比べるとまだ低水準を維持していますが、昨年平均の2.4%からは明らかに上昇しています。そして有効求人倍率は1.04倍で、前月の1.08倍、1年前の1.59倍から急速に悪化しています。
日本では米国のように一気に失業が発生する事態は回避されていますが、企業はここまで雇用調整助成金や持続化給付金などの支援で息をついている面があります。
その間にコロナの感染が収束し、需要が回復して従来のビジネスに戻れればよいのですが、コロナの収束にまだめどはたっていません。ワクチン、特効薬の開発、承認も遅れています。
雇用調整助成金は12月末まで延長されましたが、それでも時限性があります。持続化給付金も来年1月15日までの申請となっています。こちらは不正受給の問題も出てきているため、制度の延長がなされるかどうか不明です。
そして「Go To」キャンペーンの拡大で、苦境にあった観光関連、宿泊、飲食店の需要喚起をしていますが、キャンペーンが終了した後の不安は払しょくできません。
このため、企業の求人もこのところ減っています。厚労省の「一般職業紹介」の8月分を見ると、月間の有効求職者が前年比12.1%増と、仕事を求める人が増えている反面、有効求人は25.6%減となっています。
新規の求人を見てみると、宿泊飲食サービスで49.1%減、生活関連娯楽サービスで41.0%減、製造業で38.3%減と、新規の求人が急減しています。企業規模では従業員500人未満の中堅中小での減少が目立ちます。
こうした状況を反映してか、内閣府の「消費動向調査」でも消費者態度指数が「良し悪し」の分岐点50を大きく下回るものの、9月には32.7まで戻してきているのに対し、「雇用環境」については依然として26.0という低水準にとどまっています。消費者にとって、雇用不安が消費の足かせになっている姿が見えます。
「米国はK字、日本はk字型」
コロナ禍で経済が急落した後、回復パターンに明暗が分かれる点は主要国に共通のようです。米国でも空運やレジャー関連は低調で、依然として厳しい状況にある一方、ネットフリックスやアマゾンなどは順調に上向き、この景気パターンを大文字のKになぞらえる見方があります。日本ではこの上向き組が少なく弱いため、むしろ小文字のkの形になります。
コロナとの共生が長期戦になるとの覚悟で、新しい市場を作り、日本でも大文字のKの形にできれば、全体の水準引き上げにもつながります。
耐え忍ぶだけでなく、新しいやり方、新しい市場開発力が問われています。政府の支援も、こうした方面で生かしていただければと思います。
image by : shutterstock
マンさんの経済あらかると斎藤満新型コロナウイルス景気回復株価
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