新型コロナウイルスの影響は、不動産市場にも大きな影を落としているようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』ではマンション管理士の廣田信子さんが、首都圏の単身者向け賃貸住宅の需要が大激減したという調査結果を紹介。不動産投資を考えている方に対して注意を呼びかけるとともに、管理費等の滞納が引き起こす深刻な事態を憂慮しています。
首都圏のワンルームマンション需要1万1,000戸喪失
こんにちは!廣田信子です。
人口減少時代に入っても、東京は24年連続で人口増加しており、人口増加率はNo.1。そんな人口増加率No.1の東京の人口は2020年3月1日時点の推計で13,951,791人。日本の人口の10%以上を占めている。
人口、人口密度が最も高い東京には多種多様な人々が暮らしているが、そのなかでも単身世帯の多さが目立つ。平成27年国勢調査「人口等基本集計」によると、都道府県別の一般世帯数は東京都が6,690,934世帯で最も多く、そのうち単独世帯は3,164,675世帯となっている。
単独世帯が一般世帯数に占める割合は47.39%と全体のおよそ半分となっている東京では、単身向けのワンルームマンション需要が根強くこの傾向は変わることはない。したがって、ワンルームマンションが増えても、安定した収入が将来も見込めることは保証されている。だから、ワンルームマンションを購入しませんか?
というのが、投資用マンションを販売、管理している会社のセールトークでした。コロナ禍が始まっていた今年の4月にも、そんなメールが届きました。
どんなにワンルームマンションが増えても、東京の便利な立地のワンルームマンション需要は減ることはない。それ信じて、次々物件を担保にローンを組んでワンルームマンションのオーナーになっている方は多いと思います。
不動産賃貸業の現場の声は、下記に書きました。
● 大家さん悲鳴 コロナ禍で下がる家賃相場。学生や会社員が次々に解約
先日、賃貸住宅の需要について、不動産評価サービスの(株)タスが、「賃貸住宅市場レポート」を発表しました。それによると、首都圏(1都3県)の「住民基本台帳による世帯と人口」データから、2020年上半期(1月~6月)は2019年上半期に比較して、東京都で約8,000戸、神奈川県で約1,100戸、埼玉県で約2,000戸、計1万1,100戸の単身者向け賃貸住宅の需要が消失したと推測しています(千葉県のみ前年同期とほとんど変化なし)。
筑波大学と協同で首都圏を調査分析したもので、15~29歳の多くが単身者向け賃貸に居住し、30~59歳の3割程度が単身者で、その半分が単身賃貸に居住しているとしてはじき出しているといいます。
コロナ禍で、首都圏に移動予定だった大学生が転入できずにいることや、企業が集積する東京都では、社員の転入自粛をしている影響も強く受けていると分析しています。
単身用賃貸住宅の需要消失が、今後、回復できるのか、戻らないのか…不動産投資を考えている方は、冷静に見ていく必要があるでしょう。
しかし、1万1,100戸の単身者向け賃貸住宅の需要喪失はたいへんな数字です。50戸のワンルームマンションに換算すると、222棟分です。
管理をする側として気になるのは、空きの発生で、家賃収入が入らず、管理費等の滞納が間違いなく増えるだろうということです。投資用マンションは、分譲マンションと賃貸マンションの狭間で、あまり、きちんと施策がとられてきませんでしたが、今後、投資用マンションを適切に管理するための施策が国土交通省でも、検討されるようです。
コロナ禍、空室の発生、管理費等の滞納…がそれを加速する契機になるような予感がします。
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