4. 分散による富の増大はあるか?
米国は資本主義というシステムで世界の富を集中しようとしている。同時に、中国は共産主義というシステムで世界の富を集中しようとしている。世界には二つの富の集中システムがあり、現在は互いが争っている。
しかし、一方がこの争いに勝ったとしても、世界の富は集中しないだろう。それどころか、バブルのように膨らみすぎた富は弾けるかもしれない。
多分、世界は新たな経済システムを必要としている。その一方で、デジタル技術は、富の集中システムを崩壊させ、富を分散させるのではないか。
最終的に、富を増やすには、集中が有利なのか、それとも分散なのか。競争原理は集中により、富を生み出した。しかし、デジタルを基本とした分散を促進する原理は確立していない。分散とは独立、自立、自給自足である。富を分散することで、全体の富が増大することが分かれば、独立することが奨励されるだろう。
個人も独立し、企業も国家も独立することが富を増大させる世界。そのための経済理論や行動理論が生れるのではないだろうか。
編集後記「締めの都々逸」
「自分で作って 自分で買って 休む暇なく弱るだけ」
考えれば考えるほど、我々はお金を生み出すマシンの一部になっていますね。お金を稼いでも、次からへと新しいモノが売り出されます。どこかで、新しいモノを諦めない限り、働き続けることになりそうです。
こんなに働かなくてもいいんじゃないか、と思うのは、農業の機械化と効率化です。日本の農業従事者の平均年齢は67歳で、それで仕事が回っています。
会社員も生活の一部の時間を農業にあてれば、自分の食料程度は作れるのではないか、と思うのです。
一般の会社の仕事も、本気で合理化しようと思えば、仕事は減らせるはずです。給料が少なくなっても、自由時間を増やして、副業を行い、都会から脱出すれば、何とかなるのではないでしょうか。
人口を集中するより、分散した方が生活の質が上がると思います。お金より時間。そんな価値観が重要になるかもしれません。(坂口昌章)
image by: Shutterstock.com