持続化給付金を搾取した疑いでの逮捕者が日を追うごとに増加している。広島県警は4日、持続化給付金をだまし取った詐欺の疑いで男5人を再逮捕したが、その背景には、県内の学生や会社員ら100人以上が関与したとみられ、今後の捜査次第ではさらに逮捕者が増える可能性がある。
まるでマルチ商法、給付金詐欺の手口
逮捕された5人は勧誘した100人以上の大学生らに運転免許証などを送らせて個人情報を悪用。中小企業庁のホームページから給付金を申請し、100万円を入金させたとみられる。大学生たちの大半は報酬として10万円を受け取っていた。
驚くのは100人以上が何らかの形で関与していたということだ。
「運転免許証を送るだけで報酬をもらえる」という甘い言葉に誘われたのだろうか。冷静に考えれば、そんな楽なアルバイトがあるはずがないことはわかる。にもかかわらず、1人や2人といったレベルではなく、100人もの大人が詐欺に加担してしまった。
このような大規模な詐欺に発展した背景に、マルチ商法のようなネットワークが存在していたことは間違いないものと考えられる。
相次ぐ給付金詐欺の逮捕者
持続化給付金を搾取した事件が次々と明るみになる中、大学生が逮捕されるケースも多く報道されている。なぜ大学生は給付金詐欺に手を染めてしまうのだろうか。
- 9/29 愛知県 愛知大学に通う男子大学生2人が逮捕
- 10/21 京都府 同志社大学に通う男子大学生2人が逮捕
- 10/22 山梨県 県内の大学に通う女子大学生1人が逮捕
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10月28日付の毎日新聞は、21日までに「不正受給を巡って全国で55人が逮捕、被害総額は計4300万円に上っている」と報じていたが、ここへ来て逮捕者が急増。今後さらに増えていくとみられる。
自分も“被害者”という誤った錯覚
なぜいとも簡単に持続化給付金詐欺に加担してしまうのか?
さまざまな社会問題に精通し、持続化給付金詐欺にも詳しいルポライターは次のように説明する。
「まず、広島の事件みたいな名義だけを貸す大学生たちは、割りのいいバイトくらいにしか思っていません。みんなやっている、あいつもやっているから大丈夫という軽い気持ちですね。でも、給付金詐欺のニュースを見て、初めて自分がとんでもないことをしてしまったと気付く。今頃みんな怯えていますよ」
また、名義貸しではないパターンとして、誰かにそそのかされて自ら持続化給付金を申請した人たちも多くいる。
「そういう人には指南役のような人が必ずいます。騙されるのは派遣社員やアルバイト・パートで生計を立てている人たち。『フリーランスだから給付金を受け取れるよ』と勧めるわけです。言われた方は、『そっか、俺は非正規だからフリーか』と錯覚してしまい、言われるがままに申請書を提出し、給付金を受け取ります。そこから手数料を支払う仕組みですね」(前出・ルポライター)
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どちらの場合でも、共通しているのは「そもそも犯罪に手を染めているという認識がない」ということ。お金を受け取っておきながら、「自分も被害者」だと思い込んでいる。持続化給付金詐欺に加担しておきながら、自分は詐欺師に騙されたと本気で考えているのだ。
何十万円ものお金を好き勝手に使った挙句、開き直ろうとする態度。そんな虫の良い話が通るわけがない。