相手に直してほしいと思う点がある時、その「欠点」を指摘し矯正を促してもなかなか思い通りにはいかないものです。そんな際に試してみたいのが、相手の自尊心を利用する方法。今回の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では現役弁護士の谷原誠さんが、「期待効果」と言われるその方法をレクチャーしています。
期待効果
こんにちは。弁護士の谷原誠です。
私が何度も読み返している名著『人を動かす』(デール・カーネギー)の中に、「期待をかける」という章があります。相手のある点について矯正したいと思えば、その点について彼はすでに人よりも長じているといってやるのだと言います。
たとえば、失礼な人がいたら、「あなたは礼儀をよくわきまえている人だ」と言葉をかけます。そうすると、その人は、礼儀をわきまえるよう行動する、ということです。
「そんなバカな」と思うかもしれません。「あなたは失礼な人だ!」と言った方が効果があると思うかもしれません。でも、こう言われた人は、どう思うでしょうか。まず、自分を正当化するでしょう。その上で、「そんなことを言うあなたの方が失礼な人だ」などと考えるでしょう。
人間の、この習性を利用しようとしたのが、男子トイレに書いてある「いつも綺麗にご利用いただき、誠にありがとうございます」という貼り紙でしょう。期待に反する行動をとらせないように、という作戦です。
では、なぜ、人は、期待をかけられると、その通り振る舞おうとするのでしょうか。その秘密は自尊心にあります。
「あなたは礼儀をよくわきまえている人だ」と言われると、自尊心が満足します。そして、「失礼なことをして、せっかくもらったこの評価を落としたくない」と思います。なぜなら、一旦、「礼儀をわきまえている人」というレッテルが貼られたにもかかわらず、その後、「礼儀をわきまえない人」と見られてしまうと、自尊心が傷ついてしまうためです。自分の自尊心を傷つけないようにするために、人は、他人からかけられた期待どおりの行動を取ろうとするのです。ですから、職場で書類の整理の仕方がいまいちの人がいたら、「いつも綺麗に書類を整えてくれてありがとう」と言ってあげると、その後は綺麗に書類を整えてくれるかもしれません。
人は、不満があると、すぐに文句を言おうとしますが、それは自分の感情を吐き出しているだけのことであり、よい効果を期待するのであれば、相手の自尊心に配慮して、効果的なコミュニケーションをとる必要がある、ということだと思います。
そして、コミュニーションには、質問が有効です。
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今日は、ここまで。
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